【音展2009】 TAD-D600の設計思想に迫る

closeこの記事は 7 年 18 日前に投稿されたものです。最近の記事内容との齟齬がある場合,リンク切れが頻発している場合がありますが,ご了承下さい。

初めて秋葉原での開催となった国内メーカー主導の音響系イベント,音展に足を運んでみました。今回非常に印象深かったのは,音はさておき,開発者と直接話ができることの貴重さです。

音響機器について勉強すればするほど,本当に熱心(マニアック)な技術者の方でしたら色々と知識や経験を親身になって教えてくださいます。というわけで,個人的に印象深かった,TADとキューテックについて,複数回にわたりコメントしておきたいと思います。
ただし,伝聞かつ私の解釈が入っていますので,内容の正確性は担保しません。画像はavcat様よりお借りしました。いつもありがとうございます。

まずはTADから参りましょう!

■ TAD TAD-D600を発表。(Philewebの記事

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【オーディオが好きなスタッフ陣】
TADブースのスタッフの方はどなたもとてもオーディオという趣味について大変熱心な方が多かったように思います。私がたまたま最初に声をかけたチーフストラテジー&テクノロジーオフィサーの高木一範氏は,D600について大変うれしそうにお話されていたのが印象的でした。まるで我が子のようなかわいがり方とでもいうのでしょうか。製品として発表することができて本当に嬉しそうでしたね。
私が色々とお伺いしているうちにデモの時間になってしまったため,わざわざD600を設計された方を呼んでくださいまして,ブースの外でさらに色々とお話させていただくことができました。設計者の方は非常にお若いんですよ…。30代前半?といった印象で,非常に熱心な方でした。

【クロックに恐ろしく注力した設計コンセプト】
▼超高C/NマスタークロックUPCGとは!?
TADブースにはD600の構成パーツについて写真が掲げられていましたが,UPCGというものは見た目普通のOCXOに見えます。恐ろしく低ノイズなD600のC/Nの値(スプリアス特性とも言います)のグラフを見る限りでも,これは(私の知っている)Rb(ルビジウム)では厳しいかな?という印象でした。

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C/Nの図の読み取り方ですが,ある時間においてある周波数の信号を出力したとして,本来出力したかった周波数以外の成分がどの程度含まれているのかを,周波数ごとに表したグラフとなります。全帯域に渡って値が少ない方がより正確な波形出力品質となります。0Hzに近いほど雑音の量が多くなるのが一般的です。

ちなみに,UPCGがどのくらいノイズが少ないかというと,100Hzオフセットでセキテクノトロン取り扱いのSRS社のPRS10(標準品)より10dBもノイズが少なく,EsotericのG0Rbで使われていた東洋のRbよりももちろん低かったはず(資料紛失w)。UPCGは100Hz以降の帯域はすべて-150dB以下を達成という恐ろしい低ノイズぶりです。もちろんもっとも重要であろう1Hzオフセットの値も当然低ノイズですね。

これくらいの低ノイズを出せるOCXOですと,本当に数えられるほどに限られます。欧州の某社製品とか…。余談ですが,某社の話題で設計者の方と盛り上がりましたw

ところが,このUPCGというものは発振器メーカーと共同開発した特殊な角度でカットした常温で動作する水晶発振器だそうです。設計者の方は,できれば既存の発振器の分類法では分類してほしくないとおっしゃっていました。

たとえば,通常TCXOよりOCXOのほうが周波数安定度が高く,低位相雑音であるとされます。また,一般的なオーブンコントロールの場合,おおよそ80度程度まで水晶を暖めて特性を安定させます。Rbクロックの場合はランプでRbを加熱することで特性を保ちます(ランプが切れたら寿命)。
しかし,TADにおいては,オーブンのオンオフのタイミングで生じる電源回路に与える電気的な衝撃,およびオーブンユニットそのものが発する熱雑音の影響を検討した結果,オーブンユニットは避けるべきという結論に達したようです。

また,目標が10年後も安定稼働するプレーヤーを,というものだったそうで,長期間の使用が見込めない問題と熱雑音の問題をクリアできないRbクロックは採用を見送ったとのことでした。

▼UPCGを最大限に生かし切る!
しかし,水晶発振器の性能が高ければそれでよいというわけではありません。これが内蔵されており,DAC用クロック(マスタークロック)として動作することが画期的なのです。しかも,伊達に超低ノイズをうたう(しかも測定結果を公開する!)のにはわけがあります。

○発振周波数をCD・SACD規格にあわせて設計
通常,水晶発振器は高い周波数で発振します。おおよそ12MHz?16MHz台といったところでしょうか。また,OCXOやRbなどは通常10MHzで発振します。
しかし,上記の構成で一般に使われる発振器ですと,44.1kHzの公倍数ではないので,PLLやDDSを用いてクロック信号を生成する必要があり,この時点でジッター値が増大するという問題が不可避でした。
そこで,D600では,CD規格に親和性の高い周波数で発振するようにUPCGを設計したそうで,UPCGの極めて低ノイズ・低ジッターな性能をそのまま生かす設計としたとのことでした。

○独立電源部構成
皆さん,独立電源部構成といわれて,どんなものだと想像されますか?
通常はDCケーブルが1本でているわけですが,D600は2本のDCケーブルで本体部に給電しています。ここで,ハイエンドオーディオに親しい方は,デジタル部とアナログ部を分離して給電しているのだろうと想像されることでしょう。私もそう思っておりました。

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しかし,D600は違います。なんと,クロック部とそれ以外にわけて給電しているのです。クロック部はシールド処理された専用のトロイダルコアトランス,専用の電源回路を経由して,別のDCケーブルでマスタークロックを動作させます。
このような電源構成になったのは,電源部の品質がC/Nに影響してしまうからだそうです。クロックにこだわりを持つオーディオファンの方は電源を変更すると音が変化することを経験的にご存じだと思いますが,そのあたりもC/Nを基準にすると変化を目で確かめることができるかもしれません。

以上見てきたように,TAD D-600は大変設計思想的に優れた製品であり,日本の技術力を再評価するきっかけとなる製品だと思います。興味を持たれた方は是非試聴されてみてはいかがでしょうか。設計思想だけが先走った製品ではなく,安定したバランスの非常に充実した音がするプレーヤーですので,最近のCDPは薄っぺらい音がするとお悩みの方に特にお薦めできそうです。

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