ピットジッターとクロックジッター 3ps

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▼音が変わるなら,D/A変換がより正確になったか,アナログ部への汚染が減ったかのどちらか
 関連エントリで言及したとおり,理想的なD/A変換とは,元データと同じバイナリをもつデータを可能な限り低いジッターで変換することをいうのですから,ディスク品質とバイナリ,クロックの関係について説明しないのであれば,肝心の「不正確な変換から,より正確な変換に変わる」という部分の説明がごっそり抜け落ちていることになります。

 つまり,第一に,データ変換の正確性という観点からは,「RF/HF信号がきれいで強いとD/A変換時のクロックジッターが低くなります」ということを示さないと,CDのピットジッターや反射率が正確なD/A変換に寄与することを示したことにならないわけですね。
 もう少し一般化して言い換えれば,「光ディスクの品質によってクロックジッター値が左右される」ということをメーカーは定量的に示す必要があるのではないでしょうか。

 そして,第二に,D/A変換後のアナログ部においては,光ディスクの品質が音を変化させる要因となっているのかが問題となります。こちらも広義の意味では正確性が増したかどうかといえますね。
 とすれば,こちらのほうは,高品位素材CDが通常CDに比べてCDプレーヤーに負荷が掛からないことが明らかとなれば良いわけです。これはEMIノイズや電源の負荷がどの程度増減するのかということから判断することになるでしょう。

 以上の二点は,CDプレーヤーならば両方とも問題となり,CDトランスポートならばデジタル出力時のジッター値と読み替えた上で第一点のみが問題となります。なお,HDDに一旦貯める動作をするものであれば,この問題は原理的には回避されます。

 なお,上記のものと内容同旨ですが,参考としてラトックシステムさんのBLOGの記事をご紹介しておきます。

▼データにもクロックにも触れない不思議な技術解説
 ところが,各社発表する資料は,不思議なことに,「RF/HF信号の波形がきれいだと実際のクロック波形はこんなにきれいになります」とか「RF/HF信号の信号強度が強いとクロック波形がこんなに強くなります」とオシロ波形を示して解説した記事は今まで雑誌やメーカーの公式発表等では一度も見たことがありません。
 ほとんどが,「電子顕微鏡でみるとこんなにピットがきれいです」とか「HF信号のアイパターンがこんなにきれいです」とか「HF信号の信号レベルがこんなに強いです」みたいな言い回しの後に「だから高音質である」と続くわけです。

 こうした説明は,論理の流れとして,「ピットジッターが少なくて反射率が高いですよ→ほらほらRF/HF信号がきれいでしょor強いでしょ→だから音がよいんです」というもので,デジタルデータが正確に変換出来ているかを示すクロックジッターの話が全く言及されていないということになります(もちろんアナログ部汚染の話もないわけで)。

 既に皆さんお気づきの通り,これでは高精度・高忠実度再生を理論的に裏付けたことになりませんね。仮説すらたっていない状況です。「風が吹けば桶屋が儲かる」というのと一緒です。
 故に,高反射率を謳う高品質素材CDはむしろ現在のピックアップにとっては不適切だという指摘がなされても決着がつかず,一方的にボールを投げているだけになるわけです。

▼公式発表以上にはつっこもうとしないオーディオ系雑誌
 百歩譲って,web上での説明ならこういった技術ネタに関心がない層にも分かりやすくアピールしなければなりませんから,ざっくりとやっても良いでしょう。
 しかし,オーディオ雑誌,オーディオ技術系雑誌ですら,RF波形のパターンのきれいさとクロックジッターとの関係に言及したものがないというのは,さすがにガッカリしてしまいます。ほとんどが,前回のエントリでご紹介したメーカーの監修を受けて書かれているものであるにも関わらずです。

 もし,どなたかが雑誌等の媒体(個人のwebサイトを除く)でこの点について説明等をしているものをご存じでしたら,媒体名,該当する巻数もしくは号数,ページ番号を併記のうえ,是非ご指摘ください。

 ひっぱりまくりですが,まだ続きますw

ピットジッターとクロックジッター 3ps」への4件のフィードバック

  1. ヒューストン

    バイナリが一致すれば後はクロックジッターの違いで音は決まるというご説には、多少USBについて調べて考察した結果からも、大いに賛成するところであります。

    CDDAデータあるいはWAVデータを置く場所を、CDドライブにするかRamディスクにするかで音が変わります。 これはマスターとなるクロックの質の問題だと思っています。 つまりCDドライブのクロックとPCのクロックのどちらが最初にマスターになっているかですね。 バッファーを使う以上、同期をとらないとオーバーフローやアンダーフローで音飛びが生じてしまいます。
    XPのUSBドライバーではホスト側にクライエントが同期する方式しかサポートされておらず、同期の方向はデータの流れ方向と一致しています。
    Vistaからはクライエント側へ同期をとる方式もサポートされ、優秀なクロックを搭載したDACへ同期することもできるようになりましたが、XPでは標準ドライバーでは無理なのが現状です。 また同期をとらない通信方式は規格上は存在するのですが、XPでもVistaでもサポートされていません。
    ただし、PC内部でのデータの流れも同様かどうかはわかっておりません。たぶん似たようなものではないかと想像しているだけですが。

    また同じRamディスクでもCDDAかWAVかでも音が違ってきます。
    これは、データを処理するソフトにおけるアルゴリズムの違いが電子回路に影響してジッターを変化させていると考えるとつじつまが合います。

    以上は全くの机上の仮説で、なんら実験データを持ち合わせてはおらないのですが、サイト上で目にする現象やらデータを見る限り、上記の仮説に矛盾するものはないように思っております。
    (ただし、素人ゆえ、ドライバーに関するMSの英文技術資料の読み違えや誤解があるかもしれません。 お気づきの方があればぜひともご教示ください。)

    したがって、こういう仮説にたつと、CDのビットがきれいであることはソフトでの処理の負担が軽減され、電子回路に起因するクロックジッターの発生を抑える方向に働くのではないでしょうか。
    この場合でも、CDドライブのクロックがマスターとなってPCのクロックが追従してゆきますので、PCではあまり大きな改良効果が得られないのではないかと想像します。 CDPの場合はその電子回路の構造にもよるでしょうが、1チップでクロックが一個と想像されますので、違いが際立つのではないでしょうか。

    すばらしい貴サイトの記事を毎日楽しく拝見しておりますので、何かの参考になれば幸いと思い、始めてコメント致しました。
    今後ともよろしくお願いいたします。

    返信
  2. えるえむ

    ヒューストンさん,コメントありがとうございます^^
    ご賛同いただきありがとうございます。
    実際の伝送方法がアナログだからといって,闇雲に何でもかんでも変わるといってしまうと,やはり誤解を招くように思いますので,順序をきちんと踏んでベーシックな議論からスタートさせるべきと考えております。

    おっしゃるように,CDからデータを読み取る際に,CDに入っているクロック成分を抽出することは非常に重要です。CD自体から復調されたクロック信号は,回転速度の調整のために各種サーボ用のPLLに送られるわけで,これがうまくいかなければ音飛びの原因となってしまいます。

    XPとVistaの違いについて,ご説明ありがとうございました。
    もう既に国内に入ってきているようですが,AyreのQB-9というUSB-DACは,非同期方式のUSBデータ転送が売りのようです。この方式ですと,Windowsならカーネルミキサーさえ使わないでおけば,正確なバイナリと非常に低ジッターを両立させる環境がすぐに構築できるとおもいます。

    RAMDISKドライバはあまりさわっていないので,よろしければ教えていただきたいのですが,RAMDISKにCD-DAをマウントするというのはどのように行うのでしょうか。
    おっしゃるように,アルゴリズムが異なれば,CPUやメモリの動作も変わりますし,結果電源にも影響し,デジタル出力の品質(ジッター環境)も変換する可能性はありますね。

    CDプレーヤーの場合にはソフトウェア的な問題というよりも,ハードウェア的な問題が大きいかもしれません。このあたりは,続きのエントリで言及して参りたいと思っております。

    web拍手でもご丁寧にコメントを頂き,ありがとうございました。皆様と意見交換をすることはとても励みになります。
    過分なお言葉に恐縮しておりますが,今後とも拙サイトをよろしくお願い申し上げます。

    返信
  3. ヒューストン

    ご丁寧な返信、ありがとうございます。
    また、すでにasynchronousでのUSB転送を使用した製品が出現していること、貴重な情報で、ありがとうございました。

    asynchronousですと、PCでデータを加工しながら転送した場合(たとえばアップサンプリングなど)に時系列の再現性に問題が出ることから、これまで製品化するメーカーが出てこなかったのだろうと思っています。
    データートランスポートとしてのみPCを使用するなら、この方式がクロックジッターを引き継がない良い方法だと思いますが、PCから各種ファイル形式を送る場合に自動で追随してはくれませんから、さて使い勝手はいかがなものでしょうか、このあたりが売れ行きに影響するかもしれませんね。

    ご質問のRamDiskへのマウント方法ですが、次のごとくです。
    (1)RamDiskを通常のHDDと同様に使えるようにする。
    これは、市販の各種ソフトが出回っておりますので、それを使えば簡単にできます。 私はIntercom inc. のRamDisk Tweakerというソフトを使用しています。 探せばフリーソフトもありますが、OSに依存しますので、市販品よりは使い勝手が難しくなります。
    これらのソフトで、お使いのPCのRamDisk のうち、どの程度を切り分けるかを指定すれば簡単にできます。
    ただし、CDを丸ごとマウントしますし、再生ソフトもRamDiskに展開したほうがよろしいので、最低でも1G、できれば2Gばかりはほしいところです。
    XP32Bit機ではRamDiskは3G程度しか認識してくれませんが、上記ソフトによってはOSでの認識外でも使用できますので、4G搭載し、2GをPC用に、残り2GをRamDisk用にすれば使い勝手は良いのではと思っております。
    (2)RamDiskにCDDAをマウントするには、いったんCDをイメージディスクとしてデータ化し、それをコピーすることになります。
    簡単なソフトは、CDコピーで有名なCloneCDで、私もこれを使っています。
    CDを焼かないでイメージディスクを作るとこまでなら、お試し版で試用期限が切れても使えますので、フリーソフトみたいなものです。
    イメージディスクの置き場所をRamDiskに指定すれば簡単にできます。
    (3)RamDiskからの再生を行うには、そのCDのイメージファイルを擬似的にCDドライブ化してやる必要があり、これまた専用ソフトが必要になりますが、上記のCloneCDと同じメーカーからVirtual Clone Driveというフリーソフトが出ていますので、それを使えば簡単にできます。
    マイコンピューターをあけるとVirtual Clone Driveというドライブができていますので、RamDiskのイメージファイルをそれにマウントすることで、通常のCDドライブとまったく同じに使用できます。

    CDから作ったイメージファイルはCDDAとしてバイナリは完全に一致していますので、このようにすればCDドライブの回転系の影響を一切受けずにCDDAを再生できることになるはずですが、さてどんなものでしょうか。
    お使いになってご感想をアップして下さると幸いです。

    当初、web拍手からコメントを入れるのかと勘違いして送ってしまったので、お手間を取らせましたが、ご容赦ください。

    このシリーズの続きも実に興味深い内容が展開されていますので、楽しみにしております。
    ますますのご健闘を祈ります。

     

    返信
  4. えるえむ

    >ヒューストンさん
    ご丁寧な解説ありがとうございました。
    ご説明を拝見して,そういえば…やったことあるなと思い出しました(爆)。
    本当はもう連載を終了させようとおもっていたのですが,ちょっとひっぱってみることにしますw

    ついでに,AyreのQB-9についても補足説明を加えますね。
    海外ではUSB-DACが非常に盛り上がってきていますので,今後は如何に手軽に高品質な(加えてできれば廉価な)オーディオ環境を提供できるかが勝負のような気がいたします。

    返信

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