Ayre QB-9

closeこの記事は 7 年 9 ヶ月前に投稿されたものです。最近の記事内容との齟齬がある場合,リンク切れが頻発している場合がありますが,ご了承下さい。

http://www.axiss.co.jp/Ayre/whatsnew_Ayre_QB-9.htm

 ジッター値が10ps(ピコセコンド)しかないという超低ジッター設計のDACがついに登場しました。興味深いのは,これがPCとUSBでつなげることを念頭にしたDACだということです。そしてUSB入力以外無いという割り切った仕様となっているのがますます興味深いですね。

 技術資料は元々Ayreが発表していたホワイトペーパーを日本語訳したものですが,現状のコンシューマ向けデジタルオーディオの問題点を網羅的かつ端的にまとめた文章ですので,是非併せてお読みください。

▼個人的な注目点
 デジタルオーディオの世界では,今外部マスタークロックによるWordsyncがブームとなっていますが,単純なPLLによる同期の場合,ジッター値は改善されないケースがあることが知られています。
 外部クロックの導入で数値が改善されないケースというのは,DAC内蔵の水晶発振器が比較的高精度であり,DACチップ近傍におかれていてマスター動作するような場合です。もっとも,仮に数値的には悪化したとしても,音質的には好印象になることもあるのが難しいところですが…。

 QB-9はコンセプト自体がかなり正攻法のアプローチで考えられています。
 クロックの問題はとにかく数値上低ジッターになることを目標として,
(1)DACからPCに対して送るデータ量を指定する方式を採用することで,USBで送られてきたパケットの転送レートを参考にオーディオ用クロックを生成する必要がなくなり(パケット伝送的にはDACにPCが同期),
(2)あくまで高精度なインターナルクロックを基準としてD/A変換を行うことで,低ジッター環境を実現させ(D/A変換的にはDACとPCとは非同期),
(3)加えてUSBからの電気信号を光信号に一旦変換することで,電気的結合等によるノイズの影響を抑え,ジッター値の悪化やアナログ部への汚染を避ける
という手法により,インターナルクロックの性能を最大限に発揮させているわけです。

▼注意すべきこと
 こうしたAyreのデジタル領域におけるアプローチは,これを製品として市場に供給し,技術的にこのような方法が可能であると知らしめたこと自体がとても意義深いことですが,これらの技術は理想的D/A環境を構築することに成功したという趣旨であって,即QB-9の音が正しい音であるということではありません。
 QB-9がライセンスをうけたWavelength社の技術は,バーブラウンの特定のDAC用チップを動作させるものですし,当然ながらDACのアナログアンプ部の設計は各社各様ですから,仮に今後Wavelength社からライセンスをうけたDACが次々に登場したとしても,それぞれのDACが個性をもった音色を奏でることでしょう。

▼おまけ
 morohideさんのBLOGにQB-9デモ機の試聴記がUPされていますので,ご関心のある方はどうぞ。なかなか良いようです♪(内部写真がいち早く公開されていますw)

Ayre QB-9」への13件のフィードバック

  1. 大天使心得

    「DACの非同期動作」というのは非常に曖昧な表現で、誤解を招きませんか?現行標準的な方式にしても「同期」しているのではなく、いわばPLLによる「可変追随型」ですから、なおさら「非同期」という表現はあまり意味をなさないような気がします。
     それにしてもpuccini u-clockの大場商事の紹介は「非シンクロモード」と書いたり、確かに翻訳調のような不明確な表現が目立ちますね。アクシスの資料がちゃんと整理されているだけに目に付いてしまいます。

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  2. えるえむ

    大天使心得さん,コメントありがとうございます^^
    せっかくですのでGoogleで調べてみました。

    PLLの同期については,
    ○PLL 追随 に一致する日本語のページ 約 1,920 件
    ○PLL 同期 に一致する日本語のページ 約 48,600 件
    ということのようです。
    まぁ,PLLは位相を同期させる目的で使われる回路ですし,個人的には特に用法上の違和感はありません。
    逆に,同期という言い回しにしないと多くの方はイメージが湧かないかもしれません。
    本文はQB-9についてご紹介することが主眼ですので,PLLの詳細な動作については省略させていただきました。

    また,DACの非同期動作ですが,アシンクロナスを直訳して「非同期」で良いのではないでしょうか。
    セイコーエプソンの方も非同期とおっしゃているので大丈夫でしょう。
    http://www.kumikomi.net/article/explanation/2002/07inter/06.html

    本文においては,デジタルオーディオでいう非同期ということで,デジタル入力からクロック成分を抽出することもしなければ,WordsyncによってDACをMasterにすることも外部マスタークロックジェネレーターを使用することもない,ということを念頭に記述してあります。

    大場商事さんは,TIAS2008の時点ではpuccini u-clockのことを全く説明できませんでしたので,おそらくあまりPCやデジタルがらみには強くないのだろうと思います。アイソクロナス伝送とアシンクロナス伝送は違いますが,こちらも紛らわしいですね。

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  3. juubee

    最近は10万以上のオーディオ機器に縁のない生活を送っていますので、見当違いな事を言っていたらご勘弁願いたいのですが、

    技術資料4Pにも
    >Windows,Macを問わず標準的なサウンドドライバーで
    と書いてあるのが気になります。
    これをそのまま受け取れば少なくともWindowsではカーネルミキサーを通ってしまうので、サンプリングレート変換は免れませんよね。こんな機器でこんなお間抜けなことがあるのでしょうか? 他にCECのDACでもドライバーについての言及は見つけられず、非常に気になります。

    同様なことが、iPod用DOC wadiaの170iでも気になります。デジタル出力のバイナリは元と一致するんでしょうか? 知りませんか? 

    返信
  4. えるえむ

    juubeeさん,コメントありがとうございます。
    ご指摘のとおり,USBサウンドデバイスとして動作するDACの場合,Windowsならカーネルミキサーを経由するか否かはバイナリの同一性の点で非常に重大な問題といえるでしょうね。
    オーディオ機器メーカーはあくまで機器を作る会社なので,自前でドライバを用意しているところはほとんどありません。例外的にONKYOが一部自社でカーネルミキサーをバイパスする仕組みを用意していますが…。

    ですから,うっかりPC内部で非整数倍にリサンプリングされてしまってバイナリの同一性が担保できない状況では,いくら低ジッターを謳ったところでむなしいだけですね(苦笑)。その部分はユーザーが各自気を遣ってやる必要がありそうです。

    WindowsXP環境ですと,foobar2000がカーネルストリーミングに対応していますので,これでカーネルミキサーはバイパスできたように記憶しています。
    WindowsVista環境ですと,サウンドデバイスを排他的に利用できるモードがOS上で実装されたようですので(私はVista使ってませんので詳細は存じておりませんが),Vista用ドライバが提供できればサンプリングレート混在によるリサンプリングの罠からは逃れられるのではないかと思います。

    morohideさんのBLOGによれば,Ayreではリッピングソフトによって音が変わりうると述べているようで,現状ではEACを推奨しているようです。
    同じように,再生ソフトは何でもよいとはいっても,最低限ASIOを使わずにバイナリ一致のまま出力できる再生ソフトを紹介するくらいのことはしてくれるのではないでしょうか(私は不勉強ゆえfoobarしか知らないです…)。

    さて,Wadia 170のほうですが,iPodの場合はリサンプリングをするようなことはしていないようですので,バイナリは一致すると思われます。もっとも,そうであろうと思われているだけかもしれませんし,私はweb上でバイナリの一致を確かめた記事は未見です(おそらく存在するとは思いますが)。

    返信
  5. juubee

    お返事有難うございます。

    WindowsXPでもASIO頼みだけでなく再生ソフトでカーネルストリーミングできたんですね。勉強になりました。foobar2000以外にもあるようですね。近いうちに確認してみたいと思います。Vistaは・・、いじれる環境が近くにないので難しいかな。

    >リッピングソフトによって音が変わりうる
    このあたりは取り扱いが微妙ですね。私も昔試したことはあり、その時はそう感じたんですが、本当にそうなのか再度慎重に確認したいとは思っています。ライティングソフトだと明確に言えるんですが・・。

    >Wadia 170i
    iriverのiHP120というデジタルプレーヤーを持っていまして、こいつはプレーヤー単独でSPDIF出力が可能なんですが、バイナリは一致しません。なので、170iもそう簡単に信用できません(笑)。結局(自分で確認するしかないかなぁ)、という気もしています。

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  6. えるえむ

    >juubeeさん
    まぁ,EACを推奨する理由は,傷の多いCDも複数回がんばってリトライしてちゃんと読めるからとか,DBと連携してエラーの有無をチェックしてくれるからとか,そういうバイナリ一致の保障が手厚いということかもしれません。
    伝聞に次ぐ伝聞ですから,話半分どころか,噂話程度とお考えください^^;

    Wadia170,PCがないと使えないんですから,どなたかループバックして試している方がお一人くらいいらしてもおかしくは無い状況だとはおもうのですが…。
    でも,juubeeさんはご自分で検証しないと気がすまないタイプの方だとおもいますので,期待しております♪

    返信
  7. ヒューストン

    asynchronousは、通常のPC用語としては非同期といわれているようですが、USBでオーディオ信号を送る場合には、だいぶ趣が違います。

    USBのデータ転送については、規格としてControl, Bulk, Interrupt, Isochronousの4種類が規定されています。 ControlとInterruptはデバイスの操作に必要とされるもので、大量のデータ転送は、BulkまたはIsochronousで行われます。
    Bulkはプリンタなど、非常に信頼性を要求されるが時間的制限はない場合に使われ厳密なエラーチェックが行われる、広い意味で非同期方式です。(細かく言えばPLLで必ず追随しなければデータは遅れないのですが)
    一方、Isochronousは、一定時間内に決められたデータを送る場合に使われ、時間のかかるエラーチェックは行わない方式で、映像や音声、音楽データのストリーミングに使用されます。

    このIsochronousの中に、synchronous,adaptive,asynchronousの3種類の転送方式が規定されています。
    synchronousはデータ転送の最初に同期したらそのままで次々にパケットを受け取る方式、adaptiveはパケット毎に同期をとる、いわば可変同期方式、asynchronousはクロックの同期は取りませんが、DACのクロックを基準にしてPCに対してデータ転送レートをパケット毎に指示してやる方式で、結果としては、adaptiveの方向が違ったようなものとなります。
    ですから、USBにおいては、asynchronousを単純に非同期と言ってよいものか、かなり疑問ではあります。

    adaptiveは、DACがクロックを同期させてバッファーに送られた一定数のデータを読み出す、asynchronousはDACのクロックで決められた時間間隔の指示に基づいてバッファーにデータを送るタイミングを調節する、ということです。
    したがって、DAC側のクロックはPC側のクロックの影響を受けませんので、クロックの影響を受けないという、そういう意味では非同期ですが、ファイル転送のようにぜんぜん時間に無頓着ということではありませんので、PC側がDACに同期してデータを送っている、と私は表現したいところであります。

    何を言わんとしているのか、わかりづらいと思います。
    要するに、USBの技術仕様書は公開されておりますが、細かい点はほとんど紹介されていないので、あれこれと定義が難しいのではと思い、何かの参考になれば、とコメントしたということです。

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  8. 大天使心得

    ヒューストンさん、詳しいご説明ありがとうございます。
    おっしゃるとおりで、えるえむさんが引用された1394 Firewireの場合とUSBとは内容が異なってきますね。
    現行主流のアダプティブはチップ内部のPLLなどのクロックソースを用いて、入力されるパケット毎に追随していく方式で、アシンクロナスはDAC内部にある、USBチップ外のクロックソースを使ってコントロールするところがキモのようです。
    「DAC側にクロックを!」というえるえむさんの年来の主張とはその点でマッチするのですが、PCとのデータのやりとりとしては単純に非同期と言い切れない感が強いと思います。
    「DAC側のクロックによる動作」とか工夫された方が良いように思います。

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  9. 4D53

    皆様こんばんは

    技術的にはDACがPC(のデータ送出)を制御する事によってPCに同期する必要がなくなり、その制御のためにUSBの非同期モードを利用していると言う事ですよね。

    QB-9の技術的特長の解説としては「DACが非同期で動作」と言う表現に間違いは無いと思います。「PCに対して」と言う前置きがあった方が誤解は少ないかも?

    オーディオ信号と言う長期的には帯域が一定してるデータを扱うので、非同期でも同期してるようなイメージになるのがまぎらわしいですw

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  10. えるえむ

    ヒューストンさん,大天使心得さん,4D53さん,コメントありがとうございます^^
    まとめてのご返信となりますことをお詫び申し上げます。

    アイソクロナス伝送が同期か非同期かですが,PCの世界では,同期・非同期はもっぱら送信側であるPCを基準としているようです。なので,非同期と呼ぶのでしょうね。
    ただし,オーディオの場合は,データ送信用クロックとD/A変換用クロックは分けて考えなければならないのがやっかいです。

    確かに,USB伝送用クロックとPCM復号用のクロックとの関係性としては,シンクロナス方式もアシンクロナス方式も,USB-DACの動作としてPCがデータ伝送に用いるクロックとPCM復号用クロックとは非同期といえます。
    しかし,シンクロナス伝送がUSBから送られてくるパケットがどの程度の量であるかを監視し,その量に応じてサンプリングレートを決定してDAC用クロックを生成することには現実的な問題があり,結果DACのインターナルクロックは高精度たりえないという事情があるわけですね。

    なので,QB-9は,従来からUSB-DACはPCのクロックはD/A変換にあたっては参照していなかったけれども,サンプリングレートを決定するためにはどうしてもクロック精度を犠牲にせざるを得なかったから,それならいっそDAC側の高精度なクロックでPCからデータを送らせることで,DACチップ用のクロックに高精度なものを使えるようにしたものだ,ということのようです。

    ですので,USB規格で伝送されるデータに着目すれば(PCとDACとの関係に着目すれば),アシンクロナス伝送は,DAC側のバッファが枯渇しないようにDAC側のクロックに基づく信号によってPC側がデータを送る量をコントロールするわけですから,その意味ではDACがMasterとなる同期方式といえます(AXISS技術資料4頁3段落目を参照)。
    ただし,冒頭述べましたように,既存のデジタルオーディオでいうところのクロックの同期・非同期の問題とは別個の意味での「同期」だということだと思います。

    AyreがASRCのアシンクロナスと,USBのアシンクロナスを混同しないでね,とコメントしているのはこの辺りの事情に気を遣ったからかもしれません。

    というわけで,本文は若干ニュアンスを変更しておきたいと思います。
    皆様ありがとうございました。

    返信
  11. Macindows

    本家のWavelength Audioに分かりやすい図があります。
    http://www.usbdacs.com/Concept/Concept.html

    これはこれとして、Axissの言うところのジッター値10psについてしらべたのですが、RMS(標準偏差)なのかStereophile流計測方法のp-p計測値なのか良く分かりません。

    「RMEの96/8単体ですと250psくらいのジッター値」というのは、
    http://www.spatiality.jp/wordpress/index.php?p=432
    に書かれているものと思いますが、Axissの10psとは比べられないと思います。

    ちなみに、各社自称のjitter値だと
    Prism sound dream DA2 Intrinsic less than 18 picosec
    http://www.prismsound.com/music_recording/products_subs/da2/da2_spec.php

    Logigec Transporter
    Jitter (standard deviation):
    * 11ps at oscillator (intrinsic jitter)
    * 17ps at DAC
    * 35ps at S/PDIF receiver
    http://www.slimdevices.com/pi_transporter.html

    となっています。

    ちなみにTransporterの場合、Stereophile流の計測方法では
    http://www.stereophile.com/mediaservers/207slim/index4.html

    Fed 24-bit data via the WiFi network, the Transporter developed just 235 picoseconds peak–peak of jitter with no data-related components (not shown). Decreasing the word length to 16 bits gave the spectrum shown in fig.10. Here the jitter level has increased slightly, to 268ps p–p; though there are data-related sidebands (red numeric markers) at the test signal’s residual level.

    となるので、Ayre QB-9の場合も同一条件での計測が待たれますね。

    返信
  12. Macindows

    すみません、Prism DA2のjitter値ですが、
    Prism sound dream DA2 Intrinsic less than 18 picosec RMS
    としていただけませんか。

    なお、RMEの96/8単体のDACとしてのjitter値は
    The original RME’s analog outputs had very high jitter―3974ps (3.97ns)― leading to an analog noise floor that on average was around 12dB higher than that of the outboard Musical Fidelity processor. However, there was a big improvement when I looked at the jitter in the second sample’s analog output (fig.4). The absolute level of the jitter dropped from 3.97 nanoseconds to a superbly low 136.5 picoseconds, with almost no data-related components (red numeric markers) visible in this graph.

    http://www.stereophile.com/accessoryreviews/299/index6.html

    となっています。

    返信
  13. えるえむ

    Macindowさん,コメントありがとうございます^^
    そうですね。Stereophile式測定法とRMSを測定するのでは全然話が違いましたね…。
    おまけに96/8の件も紛らわしい書き方をしてしまいました。
    この点は本文を一部削除することで対応させていただきました。
    あらためて,Stereophile式ジッター測定法について言及したエントリも書いてみたいところです。

    TransporterのJitter値低いですね!Macindowsさんが選ばれただけのことはあるというか…(笑)。
    筐体の内部はかなり空きスペースがあって,色々考えてしまいますが,デジタルの場合は基盤はコンパクトの方がよいですし,なるべく面実装でパーツをハンダ付けしてしまったほうが特性もよくなりますから,一見してゴテゴテしているのを喜ぶ風潮は見直されるべきかもしれませんね。

    返信

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