マルチョウエンジニアリングのケーブル

closeこの記事は 7 年 9 ヶ月 13 日前に投稿されたものです。最近の記事内容との齟齬がある場合,リンク切れが頻発している場合がありますが,ご了承下さい。

 めずらしくケーブルの構造で特許を取得しているマルチョウエンジニアリングのSpケーブルを試聴することができました。一応最高級のシリーズ(SLTC8SP)らしいですが,それでも4万円台なんですね。昨今のケーブルインフレを考えると良心的。

 で,感想はというと…。

 いやー。素晴らしいです!「4万円台のケーブルとしては」と言うよりも,市販品でトップクラスの音質ではないかとおもいます。少なくとも,今まで拙宅で聞いてきたSpケーブルのなかでは最高峰といって良いですね。
 今回はブランドの設計思想が気に入ったというよりも音そのものがとても気に入りました。

▼音質傾向
○歪み感の無さ
 普段こんな項目はないんですが,歪み感が全くないのが驚異的…。とにかく歪まない。ピーク感がない…。なんでしょうねこれは。このどことなくシルキーで,それでいて緻密で情報量の多い感じは初めて経験しました。

○定位
 特定の帯域にピーク感を感じないにもかかわらず,定位は抜群です。数多くのケーブルで遊ばれた方でしたら,比較的廉価なケーブルで定位が良くなったと感じる大半のケースは高域に癖がある場合であるということがおわかりになっていることとおもいます。
 ところが,このケーブルはどういうわけか音像を細身にすることなくフォーカスの良さを示すので,音像の立体感や厚みがきちんと表現されています。エネルギー感や密度感で音像の実体感を出すのではなく,フォーカス感,空間のにじみの無さで音像が浮き上がるような音というのは,技術的な思想と併せて考えても大変興味深いところです。

○音場
 音場は通電直後は奥行き展開しますが,しばらく通電すると徐々に音場が前に広がってきて,最終的にはセンターを中心に奥行き感のある音場が出ます。
 とにもかくにも音場表現が素晴らしいケーブルですね。非常に正確です。横方向にも広いですが,特筆すべきは前後方向の音場表現でしょうか。音像自体が奥まって定位してしまうようなことはなく,むしろSp間かやや前に勢いのある感じなのですが,それでいて音場の奥行きが深い…。
 ここまで前後感がきちんと表現できるケーブルは珍しいです。この前後感の出方はClefさんのケーブルを思い出しますね。

○分解能
 全く不足は感じません。あまりの定位感の良さに意識がいかないかもしれませんが,むしろ非常に高分解能ではないかとおもいます。特に空間表現が圧倒的なので,どちらかといえば低域より高域の分解能の高さが耳につきますが,ピーク感も歪み感もないので,嫌みではありません。
 また,スピード感のようなもので分解能を主張する感じではなく,単純に音数が多い印象です。特に空間情報が多いですね。特定の帯域のピークによって余韻が伸びるというよりは,余韻が掘り起こされるような印象です。

○音色・帯域バランス
 ことさら特定の帯域を強調することはなく,薄くも濃くもない音でありながら非凡な性能で面白いですね。大抵中庸なケーブルは全て中庸でこれといって光るものもないのが普通なのですが…。まぁ,どちらかといえば濃いめになるかも(100段階で55くらい濃いw)。
 低域は高域に比べると若干柔らかい感じの音調のように思います。オーディオ好きの方向けなら,もう少し低域に芯があって重さを感じられると良いかな?という気はしますが,そこはハードのほうが本来分担すべきことだとおもうので,十分合格点だとおもいます。最低域はむしろ伸びているような印象です。
 音場のところでも言及したように,音像のリアルさで実在感を出すタイプなので,パワーや密度感・押し出し感で実在感を出す方向ではありません。つまり,「凄み」のあるケーブルではないということでしょうか。でもこの力みの無さが凄いんですけどねw

▼注意点
○導通してからしばらく音が変化します。
 短期的には30分は最低通電が必要ですが,24時間経過したくらいでもまだ変化していますね。短期的には音像定位や音場の出来方が変わる感じですが,長期的には帯域バランスが変化する印象です。特に低域方向で改善が感じられます。
 初期エージング終了の目安としては,最初ボーカル音像を中心にひっこむ音場となるところ,前に広がる音場に変化してボーカルがセンターかやや前のめりくらいで定位するようになったらOKです。

▼気になるのは…
○見た目が安っぽいです。
 とにかく見た目が手作り感満点で所有欲を全く刺激しないところでしょうか(爆)。とってもチープです(チープだから安くできるとも言える)。ケーブルは全く見えないセッティングの方なら良いと思いますが,どうしてもケーブルが露出せざるを得ない状況にある場合には,この外観は気になります…。

○外来ノイズには非常に弱そうです。
 構造的には大ざっぱにいえば平行2芯ケーブルと一緒なので,外来ノイズには弱い印象があります。このケーブルは分解能は高いといえるでしょうけれども,S/Nで言えばノイズフロアが低いというよりシグナルが強い(ように感じる程音数が多い)印象です。

▼買うの?
 でも,性能だけでいったらもう外すのが惜しい程ですね。長さがありすぎるので,もう少し短くしていただいて,色々個人的な妄想が実現できるか問い合わせてみて,注文しようかな…。う?ん。

マルチョウエンジニアリングのケーブル」への4件のフィードバック

  1. AVCTNEGY

    AVCTNEGYです
    丁度2年程前にマルチョウの長谷川様が私のURLをご覧になって、ラダーケーブルに関してのコメントが欲しいとの依頼がありました.2m程のスピーカーケーブルが試聴用に送られてきました.試聴結果は、以下に述べます技術的先入観が私にはありますので、私には高音域重視のケーブルであるとの判断をいたしました.ただ、私の使用しているオーディオシステムはプワーであり、又、スピーカーケーブルの評価を行う為に、AMPとスピーカー間が5m離れていますので、2mのケーブルは間に合わせにフルレンジのスピーカーを持って来て行ったものです.
     まず特許に関しては、明細書の記載は電気的な説明は私の知識ではよく理解できませんが、特許庁の審査官は当出願が構造特許でありますので、この様な構造のケーブルは世にありませんので、特許権を許諾したものであると思います.明細書にはモガミ電線の3082を2本使った実施例が出ています.モガミ電線の3082は高周波域ではZo=50Ωの単心シールド線で、RCAケーブルとして愛用されている方も多いのではないでしょうか?
     実際のケーブルは2本のシールド線(A,Bとしましょう)を平行に配置し、中心導体を使ってスピーカーケーブルを構成します.Aを+用にしましょう.マイナス用のBでは適当な間隔で複数箇所でシールド部を切断します.同じ箇所でAのシールドを切断して、リード線でAのシールドとBのシールドと、更にBの中心導体を接続します.これでケーブルは完成します.
     この構造をよく見ますと2本の線心間にキャパシタンスを付け加えたものに相当します.モガミの3082は横巻きした細い導体ですから表皮効果の影響が出ません.又.大きなキャパシタンスが線心間に入りますのでZoが小さくなり、高周波域のスピーカーユニットのインピーダンスに近づくのです.
     此れらのことからこのケーブルは高解像度のケーブルと成りますが、導体が細いので大型のウーハーへの給電には向きませんので、バランスとしては低域が弱くなります.特に大型のスピーカーシステムで、ある程度の音量を求める場合には適さないと思います.
     この様な考え方は江川三郎さんの「方向性の無いスピーカーケーブル」と称されるものと似ています.ケーブルが短く、スピーカーシステムが小型の場合にはそれなりの効果が発揮されると思います.
     ケーブル設計の常識としては、靜電容量を大きくするのはロス増に成るので行いません.此れはまさに電子回路の設計ですね.マルチョウさんはその様には考えていらっしゃらないかもしれませんが・・

    返信
  2. えるえむ

    AVCTNEGYさん,コメントありがとうございます^^
    特許明細を読む限りは(真偽の程はさておき),交流信号伝送にともなって生じる磁界の影響で生じる力が絶縁体にかかることによって不可避的に生じる,絶縁体内部の誘電体現象を可能な限り減少させるという技術的課題を,ケーブルの構造によって解決した点にあるということかな?と思っています。

    ちょっと頭がこんがらがってしまったので,質問させてください。


    >モガミの3082は横巻きした細い導体ですから表皮効果の影響が出ません.

    横巻きというのは,シールド部が横巻きという理解でよいでしょうか。
    細い導体ですと表皮効果の影響が少ないというのはよく登場する話ですが,横巻きであることと表皮効果はどのように関連するのでしょうか。


    >導体が細いので大型のウーハーへの給電には向きませんので、バランスとしては低域が弱くなります

    ということは,理論的な背景をもった導体の太さの理想があるということでしょうか。
    確かに導体が太くなって直流抵抗が減れば低域の量感が増すと言われますが…(厳密には電磁制動力の増減?)。
    ただ,総じて導体が太くなる場合には,同時に絶縁体も太くなったりして静電容量も自己誘導係数も増えてしまう気がするので,高域が減衰しやすくなる条件が揃っていますよね。


    >ケーブル設計の常識としては、靜電容量を大きくするのはロス増に成るので行いません

    ○キャパシタンス(C:静電容量):高域を減衰させる要素
    【低くするには?】絶縁体の比誘電率を低くする,導体の断面を小さくする,導体を短くする,±の導体間距離を大きくする

    と以前調べていて一応まとめておいたのですが(これ自体合っているのか確証はないものの…),マルチョウさんのケーブルの構造上のロスは,導体を増やすことのロスに比べてどの程度のロスになるのでしょうか。

    信号を減衰させないというなら,静電容量は少ないに超したことはありませんが,バランスだけで論じるなら静電容量が構造的に大きく,かつ平行線(A芯線が+でそれ以外が?)なので自己誘導係数が増えて高域が減衰する結果,帯域バランスはとれているとも考えられますし…。

    ケーブルは全ての要素を満たすのが難しいので,バランスを取りながら作るのが難しいですね。
    マルチョウさんのケーブルを見ていて,U-byteケーブルを思い出しましたが,これが表皮効果を無視できるという説明もよくわかりません…。

    返信
  3. AVCTNEGY

    えるえむさん ご質問に出来る限り答えますが、此れは私の設計ではないので、解説の域を出ません.
    1、理論;特許明細に書かれた技術的説明は先にも記しましたが私は理解できません.しかし、ラダーケーブルでは2本の中心導体にしか電流は流れない構造です.
    2、モガミの3082の中心導体は横巻で多分素線径が0.18mm程度ですので、音声帯域で表皮効果は発現しません.
    3.低音と導体抵抗;大型のウーハーが大きく振動する為にはムービングコイルに大きな電流を流す必要が有ります.ケーブルの導体抵抗が大きくなると電流は流れにくくなりますので、ダイナミックレンジを落とし、又、ダンピングファクターも悪くなります.ダンピングファクターの試算は私のURLのトップページの、ケーブルで何故音がかわるか?の項目に記載が有りますが、モガミの3082は細いので、DFはかなり悪くなっているはずです.ケーブル長が短いと影響は少ない.
    4、信号を減衰させる要素;音声帯域で特に低音域でのケーブル内でのエネルギーロス(α)は
    α∝√(導体抵抗;R)x(静電容量;C) です.ラダーケーブルはRもCも大きい.
    ただ、ケーブル内でのロスはパワーアンプのボリュームをその分上げればよい訳で、問題は帯域でのバランスです.この意味で、先に書きました様に3082を往復線路にしているので、解像度が上がっているという事です.因に、ラダーケーブルの様な複雑な事をしないで、3080を2本並行に配線して中心導体で往復線路を構成したら、もっと良いかもしれませんね.

    返信
  4. えるえむ

    AVCTNEGYさん,詳細なご解説ありがとうございました。
    オーディオ用に販売されているケーブルは多種多様な構造で,同軸線なら単純ですが,平角導体とかリボン状とか,様々なものがありますね。
    まずは基礎から勉強して,自分で考える力をつけなければと思うこの頃です^^;

    返信

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