リッピング方式のトランスポートについて考えてみる

closeこの記事は 7 年 27 日前に投稿されたものです。最近の記事内容との齟齬がある場合,リンク切れが頻発している場合がありますが,ご了承下さい。

 最近話題のPS Audio製PerfectWave Transport(以下,PWT)とNova Physics製The memory player(以下,TMP)についてそれぞれどのような相違点があるのか検討してみましょう。

▼PWTとTMPの共通部分を見てみる
 まず,PWTもTMPも発想は一緒です。やっていることはPC用ドライブでのリッピングです。つまり,CD-DA規格のデータをPCMデータに変換して記憶媒体に保存するというアプローチですね。
 しかし,変調がかかっているCD-DAのデータをDACチップが解釈できるPCMデータに変換することは,どのCDプレーヤーでもやっていることですので,PCMへの変換がCDプレーヤーとの決定的な差であるということにはならないように思われます。
 また,PCオーディオを実践されている方々にとっては,リッピングという手法自体特に目新しい技術というわけではありません。逆に,こんなうまい言い方があるんだなとこの宣伝文句を見るたびに感心してしまいます(汗)。
 むしろ,肝心なのはデータをどのように保持し出力するのかについてのアプローチです。

▼TMPの特徴
 TMPは,ほとんどPCと同じです。ハードウェア的には単なるPCだと思いますから,それこそPC上にリッピングしたデータを再生しているのと同じことだと思います。こちらは既存のデジタル出力だと記憶していますので,手法としては特にジッターに強いわけではありません。
 なぜなら,ジッターが影響するのは,音声信号とクロック信号が一緒くたに送られていること+そのクロックを元にDACがトラポに同期することに由来するからです。実際,PCトラポの分野でも,ジッターが問題になるのはデジタル出力をするオーディオインターフェースからというのが一般的な理解です。
 この点,TMPの場合,ジッターを減らすための仕組みとしてはWordsyncがありますが,これも一般的なPCトランスポートと変わりはありません。

 むしろ,TMPの売りはタッチパネル式のディスプレイで操作可能なPCっぽくないインターフェースなのではないかと思います。ただし,TMPが現状売りにしている機能はそれほどすごいものでもないので,現在国内他社が開発中という液晶付きPCトランスポートとの差異を訴えるのは難しいかもしれません。

▼PWTの特徴
 PWTは随時CDを読み取って出力する仕様で,50MB(CD規格で約1曲分)のRAM(随時書き換え可能なメモリ)にPCMデータを保存しつつ,RAMからデジタル出力部(DAI)にPCMデータを送ります。リッピングに用いるドライブは当然PC用ドライブです。
 課題となるのは,デジタル出力時にドライブを駆動させることによる,電源由来のデジタル出力のジッター値増大ですが,PS Audioとしては,これをI2Sでの出力で対処しようとしているということになります。このI2Sで出力することがみそで,これでバイナリとクロックを完全にわけて再生することができるわけです。
 ただし,I2Sにも問題がないわけではありません(※)。マスターはトランスポート側なので,トランスポート側のクロックの品質が低いとあまりメリットは無いと思われます。

 また,I2Sでの接続に主眼がおかれているため,PWTはWPDとセットで初めて真価を発揮します。これは,WPD以外のDACと接続するとジッター的観点からは良いオーディオインターフェースを使ったPCトランスポートと大差ない可能性もあるということです。
 このように,I2Sを採用する場合,結局は独自路線で自社のトラポ+DACという組み合わせになってしまうことがほとんどであるため,それならCDPを2筐体(たとえば電源部別筐体)にするのと何が違うのかという話になってしまいます。
 こちらはハードウェア的にはコンピュータの世界のアプローチを流用していますが,純然たるオーディオ用トランスポートと考えて良いように思います。

※ I2Sの技術的特徴,および問題点についてはラトックシステムのBLOGが大変示唆に富む内容です。

■ なお,CDプレーヤーの動作を正確に理解されるのであれば,中島平太郎氏の『図解 コンパクトディスク読本』をご覧ください。非常に勉強になります。

リッピング方式のトランスポートについて考えてみる」への2件のフィードバック

  1. さもえど

    チョット前にRATOCのブログを見て、I2Sの勉強(?)をしたさもえどです。^^;
    ノイズ対策等の問題はあれども、理論上は、ちゃんぽん伝送してるS/PDIFより、I2Sの方が好ましく感じますよね。
    まぁ実装の問題が、一番の課題ですが。w
    いずれにしても、ご指摘の通り、流す信号自体と経路の品質が下がれば、意味は無いんでしょうけども。ww

    それから、UIの設計は、今後のオーディオシステムについて、重要度が上がってくるんじゃないかなぁ・・・と思っています。
    正直、UI設計としては、PCを立ち上げる必要がある時点で、PCオーディオには少々不利な側面があると思いますし、LINN DSやUSBメモリ等を使用可能なプレーヤについても、洗練度はお世辞にも高いとは言えないと思います。
    限られたエリア内で、複雑な操作をいかに直感的にさせるか・・・ストレージ内のファイルを選曲するためのUI、簡単にストレージ内にファイルを保存するUI等考え出せばキリがないですが、そこを制して、かつ(語弊は覚悟の上で書きますが)音が良いオーディオシステムは、かなり売れるんじゃないかなぁ。

    それこそ、Windows7のマルチタッチを上手く生かしたEmbeddedバージョンのオーディオ用OSとか出れば、窓OSとしては食指が動きますよー。

    返信
  2. えるえむ

    さもえどさん,コメントありがとうございます。
    そうですね。I2Sはほとんど専用配線になってしまいますが,少なくともジッター的観点からは現時点においてはもっとも理想に近い方式であるように思います。

    また,おっしゃるように,UIを洗練させていくことは今後非常に重要でしょうね。せめてタブレットPCでリモートできる程度の利便性はほしいところです。
    こういうのは規格をオープンにして,他力本願(爆)でどんどん有志にやってもらうほうがいいように思います。そのあたりが,家電メーカー的には抵抗のある部分なんでしょうけどねぇ…。

    返信

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