スピーカーの過渡特性と歪み率を考えてみる。<序の口編>

closeこの記事は 6 年 8 ヶ月 15 日前に投稿されたものです。最近の記事内容との齟齬がある場合,リンク切れが頻発している場合がありますが,ご了承下さい。

 スピーカーって実はあまり動作の詳細をご存じな方っていらっしゃらないのかなと最近感じています。というのも,ネットに出てくる作例のほとんどはあまり理論的根拠がないし(日本は何故か未だに長岡派が多い),理論的根拠を語っていても着眼点が狭すぎて非現実的(念頭にしている動作にならない)だったりするんですよね…。
 まぁ,専門色が強くなるとネットじゃあ情報を得られないので,そのあたりが関係しているのかもしれませんが,部品点数が少ない割にスピーカーが難しいのは,音響の学問的な難しさ故かもしれません。

 私も最近になってスピーカーについてちまちまと勉強している最中なので,あまり人様のことをとやかく言えるような立場にはないのですが,全てのオーディオ機器で一貫した評価方法をされてる方って凄く少ない気がします。極端な例ですが,アンプまでは性能が云々いっていたのに,スピーカーになったら楽器です!とか(笑)。
 他にも,アンプでは過渡応答の良好さ,低歪みに着目しているのに,スピーカーでは過渡応答や歪み率について全く言及がない,なんてことも。

 そこで,とりあえずですが,スピーカーの過渡応答と歪み率についてちょっとみてみましょう。細かい部分誤解している点があるかもしれませんので,気になることがありましたらご指摘くださいね。

▼チャンネルディバイディングネットワークと過渡応答
 まず,過渡応答を例にとって考えてみます。過渡応答を調べるにはインパルスレスポンス(インパルス応答)を測定するのが一般的です。理想的なインパルスレスポンスについてはこちら
 一般にチャンネルディバイディングネットワークが入っているマルチWayスピーカーの場合,過渡応答の波形はかなり酷いです。インパルスレスポンスとか,見た目で結構やばいことになってます(笑)。矩形波で見た方がもっと悲惨にみえるかもしれません。

 図はWilsonAudioのSystem5のWATT5部分のインパルスレスポンスです。
watpup5fig08.jpg
(http://www.stereophile.com/floorloudspeakers/477/index8.htmlより引用。)

 汚いですけど,多くのチャンネルディバイディングネットワーク入りのスピーカーはこんなもんじゃないでしょうか。別段驚愕するほどのものでもないかなぁと(笑)。
 ただし,ネットワーク入りのスピーカーでも,一部のスピーカーはインパルスレスポンスも極めて良好なものがあります。Thielとか,Dunlavyとか,Earthworksといったあたりが代表的ですね。

▼フルレンジ再生と歪み率
 では,フルレンジスピーカーで再生すべきかといわれると,今度はユニット由来の問題が。
 まず,確かにインパルスや矩形波の再現性は相対的に高いのですが,音楽の帯域をフルレンジでカバーしきれないので,そもそも「再生」として難があります。
 また,スピーカーの歪みも丸々聴くしかないので,真っ当に設計されたネットワークありのマルチWayスピーカーと比べて歪み率も高くなりますね。その量はアンプの歪み率なんて目じゃないと思うのですが…。
 下図はFostexのFE166ES-Rというユニットの歪み率測定結果です。赤字(F1)が元信号(ただし高域側は不正確です),F2?F5が高次の歪みです。F2で2次歪みとなります。
FE166ES-R-HD.jpg
(http://www.zaphaudio.com/6.5test/より引用。)

 1kHzのところ,-10dBの出力をすると-50dB?-70dBくらいの歪み成分が各々でてくることになります。ものすごくおおざっぱに考えて,音圧を比率に換算すると,おおよそ2%程度は歪んでるわけですね。これに対して,トランジスタアンプの場合は全高調波歪み率0.0x%とかですから,歪み率の差たるや100倍程度になるわけで…。

 この点,マルチウェイスピーカーはユニットの低歪みな部分だけを使ってネットワークを組む事が出来ますが,フルレンジスピーカーはそういうわけにもいきません。これはあまり無視できない項目じゃないかと思います。
 というのも,スピーカーの歪みって案外深刻で,不良品で歪み率がやたら大きくなってるユニットの音を聞かせてもらったことがありますが,正直不良品でないものと比べると,とても同じ周波数の信号を再生しているようには聞こえませんでした(汗)。

 このように,結構ぎょっとするデータとかもあるみたいなので,最近よくスピーカーが一番大事なんて話がでるのも共感できるところではあります。
 ただ,残念なのは,スピーカーが大事というわりに大事だと主張する人の多くがスピーカーの性能のどこを重視するのかが伝わってこないことが多いのと,ユニットの性能も価格帯だけで判断しているようにしか見えないことが結構ある点ですね。高ければいい!みたいな…。それだと高級スピーカーのほうが音がいいっていうこととあまり変わらないですし…。
 そうなりがちな理由は,スピーカーが,特に測定とその結果の読み取り方が難しいということに根本的な原因があるのかもしれません。長くなりましたので,その話題はいずれ。

スピーカーの過渡特性と歪み率を考えてみる。<序の口編>」への1件のフィードバック

  1. gkrsnama

    やっぱりコンデンサヘッドホンが最上。振動板質量1mgの10cmフルレンジで5hzから50khzまで完全ピストンモーション!全高調波歪率も-80dbから-70db

    返信

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