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実は難しいUSBオーディオ

拙著PCオーディオガイドブックでも,USB-DAC/DDCはアシンクロナス方式のDAC/DDCを選ぶことをお薦めする記述がありますが,実はそう簡単な話でもありません。

例えば,USB-DAC/DDCに関して,よく話題になるのは以下の点ではないかと思います。

  • データ転送方式は何か?
    具体的には,アダプティブ方式,アシンクロナス方式,バルク転送方式のどれかということになるでしょう。しかし,メーカーによって「アシンクロナス方式」の実際の動作については微妙に解釈が異なっており,議論を整理するのが結構難しい状況です(例えば,dCS,Ayre,ラトックシステムの主張はどれも微妙に異なります)。これは,USBの規格書にアシンクロナス方式についての定義が殆ど書かれていないのが原因のようです。
  • ジッター性能はどうか?
    カタログスペック上で,例えば○psですと謳っていても,それは発振器のスペックであって,実際のS/PDIFやI2Sのジッター値ではない場合があることに注意が必要です(そもそも数値を掲載せずに低ジッターというだけなら誰でも出来ます)。

これら2つの点は,肝心な部分では実はあまり違いはなくて,データ転送方式はすなわち低ジッター伝送の実現に影響するかどうかという観点から語られますから,実のところ方式はどうでも良いわけです。
つまり,低ジッターであれば,アダプティブだろうがアシンクロナスだろうが,何でも良いことになります。データ転送方式が語られるのは,一般論としては,アダプティブよりアシンクロナスの方が低ジッターであろう,という推論が働くからに他なりません。

実際,CEntranceのDACPortはアダプティブ動作ではありますが,非常に低ジッターな出力を実現しています。
http://www.stereophile.com/content/centrance-dacport-usb-headphone-amplifier-measurements

ただし,アダプティブ動作の場合,USBのデータ送出のタイミングはPC側主導になりますので,PC側の送出タイミングが安定していることが重要になってきます。そう言う意味では,Stereophile誌での当該測定環境におけるデータであるということに注意は必要でしょう。
翻って考えてみると,アダプティブでは特にPC側のハード的・ソフトウェア的な吟味がより影響してくるといっても良いかも知れません。これは非同期型のサンプリングレートコンバータを内蔵するDACを使うのか同期型のDACを使うのかという点と同じ視点で考えることになります。

ですから,結局の所ジッターの議論は実測値が全てであって(その読み取り方は色々ですが),方式だけで,例えばアダプティブだから駄目ですというわけでもアシンクロナスだから大丈夫ですというわけでもないと言うことになります。
そして,低ジッターであるということが明らかになれば,次はDACチップやアナログ回路の出来が勝負になるわけですから,もちろん低ジッターであることのみで高音質であるということが示せるわけではありません。この点にも各社のノウハウが大いにあるわけです。

というわけで,最終的にはStereophile方式あるいはFidelix方式で測定してみるのがベターですが,まだ国内では統一的な測定方法が定まっていませんし,殆どデータが表に出て来ません。
ユーザーとしては,音を聞いて好ましい物を選択する他無いのが現状ではないでしょうか。

Fidelix CAPRICE 続き

既に貸し主の方(なんと個人で複数台所有!)には返却済みですが,忘れないうちに感想の続きを書いておきたいと思います。

拙宅のメインシステム環境は,放置しておくと何時間でも音楽が再生されてしまい,無音だと再生してるのかしてないのか気づかないことが良くあります。というわけで,CAPRICEを1週間ほど連続で運転させていました(汗)。

そんな状況で出て来た音ですが,益々素晴らしいですね,これは。電解コンの逆回復などの期間は終わっていると思いますが,初期にやや感じられた透明感が強調される感じはかなり収まりました。
また,クリアネスとの関係で難しい部分もありますが,若干非力に感じられた部分も殆ど気にならなくなりました。全体に理知的な音色であることに変わりはありませんが,力感もある程度出て来ます。音像がやや奥まって聞こえるのもおおよそ中央まで戻ってきました。

TwitterでDACを探しているとつぶやかれている方には,とにかくまずカプリースを検討してみては?と申し上げるくらいには良い音だと思います。DACにエネルギー感や汚れたニュアンス,音色の濃さなどを求める方以外はまず一度聴いて損はないDACでしょう。

Fidelix CAPRICE通電直後の感想

さて、今回のカプリースは某氏にお借りしたものなので、そういう状態でレビューしてもよいものなのか悩ましい部分はありますが、期待されている方もTwitterなどでいらっしゃるようですので、書いてしまいますね。

今回のエントリでの感想は、通電してから数時間〜丸1日の状態での評価です。新品だったので、適切な評価をするにはやや時間不足ということはお断りしておきます。デジタル接続はTOSリンクケーブル,アナログ接続はXLRケーブルでバランス接続しました。

まず、興味深かったのは、電源の極性でかなり音がかわって聞こえることです。全体的な音の方向性はあまり変わらないのですが、音像定位や音場、その他細かなニュアンスに違いが出てきます。オーディオファンの方なら気づく違いだと思いますので、チェックしてみてください。
なお、極性で音が変化するケースというのはシステム全体の電位差によるものであると指摘されることが多く、電位差が少なくなるのが正しい極性といわれます。ですのでどちらが正しいとは一概にいえない点に注意しましょう。

全体のパフォーマンスとしては、定価ベースですと100万円クラスの音だとは思います。定価17万位ということを考慮すると、驚異的なパフォーマンスと断言することが出来ますね。
とはいえ、音質傾向的には主張があって、透明度が高く、細やかで柔らかいテクスチャー、ややクール、という現代オーディオ系の音作りなので、DACに押し出し感やエネルギー感、音像の実体感を求める方は違う選択肢を検討されるのがよいと思います。
音場はかなり広いタイプですが、音像定位はやや奥に行きがちかもしれません。この点も嫌う方がいらっしゃると思いますが、スピーカーセッティングで補正可能な範囲内でしょう。

しかし、上記のような音質傾向というのは現代オーディオでは必須といわれるような傾向であって、カプリースは総じて現代オーディオ機器として十分すぎる性能を有しており、本格的にオーディオを始めたいという方にはかなりお薦めできる機種であると思います。見た目とか、所有欲を満たすとか、そういったことにあまり重きを置かないのであればベストな選択肢の一つでしょう。

では、世の中のハイエンドオーディオブランドのトップモデルと比較してどうかといわれると難しいですね。性能的には申し分無いものの(その時点で凄いのですがw)、最終的にはやはり好みで選ぶのがよいのでは、と思います。

ちなみに、ヘッドホン端子は、昨今のヘッドホンブームで登場してきているインピーダンスの高いヘッドホンですとか、駆動させにくいヘッドホンに使うにはやや心もとない印象です。XLRのアナログ出力が良すぎるんですけどね……。

というわけで、カプリースの感想第1弾でした。

dCSプロフェッショナル機修理受け付け終了

ヒビノインターサウンドさんのアナウンスを知りませんで,今日気づいた次第…。

http://www.hibino-intersound.co.jp/information/2437.html

昨年までで代理店業務を全て終了したとのことで,問い合わせをしてみたところ,修理受け付け自体を終了してしまったので,いかなる修理依頼(電解コンデンサ交換等)も受け付けることが出来ないと回答を頂きました。
修理については直接本国に問い合わせて欲しいとのことです。本国でも対応出来ないモデルがあるようで,コンシューマでも流通していたモデルですと,952,972/2(972)は対応出来ないようです。954,955,974は大丈夫とのこと。ただし,954は事前に修理が出来るか確認が必要なようです。

個人的には952の電解コンデンサをヒビノインターサウンドさんで総交換してもらっておいて良かったですが,それにしても大変残念ですね…。エレクトロニクス製品ならではの問題とも言えますが。あとは国内のどこか修理業者さんに持ち込む他ないのでしょうか。