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CDは媒体としてもう手遅れか?

http://tsurune-nakanesan.blog.so-net.ne.jp/2010-02-08#more

 セラミックさんのところで面白いエントリを拝見しましたが,ちょっと気づく時期がおそかったのと,コメントで長々と書くのは申し訳ないかなと思いまして,こちらで書いてみます。

 結論として,CDが廃れる可能性というのは相応にあると思います。
 ただ,それほど早くはないのではないかな?と思います。

 まず,個人的には性能としてレコードがCDを上回っているというのはちょっと疑問です。単に好みの音が出しやすいというだけじゃないかと思います。いろいろいじる余地がありますしね。原始的ですから。
 もちろん,情緒的な感性に訴えかけるサウンドを作ることが出来るという点は共感できます。私も「いいな?」と思ったことは多々あります。ただ,高性能だといわれると疑問だということです。あくまでここで言う性能というのは客観的指標として数値化できるものを意味しますが…。

 さて,CDはローエンドが触れることができる品質としては今でも素晴らしいものがあるとおもいます。手荒に扱ってもある程度大丈夫,ラジカセレベルでも音程が乱れたりしない,等々。逆に,基本性能が高いからこそ,mp3みたいな不可逆圧縮も可能っていうものじゃないかなと思います。

 オーディオファンが忘れがちなのは,多くの音楽鑑賞の場面においては,音質はすでにどうでも良い状況にあるということです。気にしなくても最低限のレベルは確保されているし,なんとなくよければ儲けもの,くらいでしょう。
 ですので,私は,技術的イノベーションとは,結局利便性のことであり音質ではないと思っています。考えてみれば,普及している高品質規格は全て便利であることの付加価値としての高品質であったように思われます。
 つまり,CDは誰にでもわかる利便性があったからこそここまで浸透したのではないでしょうか。
 たとえば,SACDは未だに普及したとはいえません。SACDになって,便利になりましたか?明らかに不便になりました。廉価なSACDPでCDより誰が聴いても感じ取れる違いがありましたか?ありませんでした。
 現状,SACDが生き残る道はマルチチャンネルしかないとおもいます。しかし,マルチチャンネルオーディオを楽しめるほどにソフトはないのです。

 では,音楽配信の今はどうでしょうか。
 PCがなければ配信データは受け取ることが出来ません。インターネットのインフラがなければ受け取ることが出来ません。クレジットカードがなければ決済することが出来ないサービスもあるでしょう。DRMでバックアップも満足にできないかもしれませんし,よそで再生するのも難しいかもしれません。

 というわけで,現状CDに変わるメディアがあるわけでもないと思うのです。つまり,今CDが売れないのは,CDそのものに問題があるわけではないということです。音楽産業の構造的な問題と,消費者の音楽を消費するスタイルの変化の問題だとおもいます。

 たぶん続きませんw

最近ちょっと興味深かったこと。

▼ICEPOWERの話
 ICEPOWER 1000ASPって,なんちゃってバランス入力だったんですね。P.3もしくはP.20をご参照ください。JEFFにも採用されてるのに,なんちゃってバランスでいいんだろうか…。システムのフルバランス化って案外難しいんですよねぇ…。

http://www.icepower.bang-olufsen.com/files/solutions/icepower1000aspdata.pdf

▼マスタリングエンジニアさん方がおっしゃる「位相」の話
 なんとなく正体がわかってきました。キン肉マンさんありがとう!現状の私の理解では,物理現象としての位相とは違う概念にまで拡大して適用されているように思います。

▼正しい意味での位相の話
○位相は善し悪しではなく,ある基準点からして進んでいるか遅れているか
○人間は4kHz以上の周波数での位相は聞き分けることができない(cf.志賀さんのサイト
○Spからの直接音に室内での反射による間接音が加わると波形が乱れるのは,位相がずれた音が加わるから
○位相が両ch等しくずれた場合には,(少なくとも4kHz以上は)周波数特性の変化としてしか人間は感知できないはず
○位相が片chずれる場合のほうが,両ch等しくずれる場合より影響は大きそう
○反射は左右均等であるほうが左右での位相のずれは少なくなるので,Sp間の中央を基準として部屋が左右対称になるセッティングが理想的ではある。しかし,反面定在波の影響が大きく出てくるので,結果的に左右で周波数特性がより正しい方向に行くとは限らない罠
○左右のSpの音量の差はもちろんそろえた方が良いが,Sp以外のオーディオ機器の左右の音量差に病的にこだわったところで,そもそもSpのユニットの個体差のほうがやばくね?っていう話
○インパルスレスポンスをフーリエ変換すると周波数応答(周波数と位相)が求められる≒インパルスレスポンスを論じることはSpの位相特性を論じることとほとんど同じ

▼理想的なルームチューニング材
 数ミリ秒以上間接音が遅れてくればいいらしい…。さて,どうやって実現する?

Blu-spec CDを聴く 3枚目

▼Blu-spec CDの技術的特徴(その2)
【Q】リッピングによってメモリやHDD上にデータを格納した場合には,ディスクの品質の違いはどのような変化になりますか?
【A】理論的には違いはないので,公式な回答としては「品質の違いは失われる」ということになります。なお,コンピュータ上のデータを再生する場合には,(個人的には)メモリに使われているクロック,HDDに使われているクロック等,ハードウェアのクロック精度の影響が相対的に大きいという印象を持っています。

【Q】Blu-spec CDが通常CDと異なる音質であるとすると,その原因には何が考えられますか?
【A】ピットジッターに由来する音質の変化については,現状測定する手法がなく,聴感で判断する他ないと考えています。仮説の域を出ませんが,CDプレーヤーは各部の電源が共通化されているので,グラウンドを媒介としたジッター量の変化,ノイズ量の変化が影響しているのではないかと予想しています。

【Q】従来はプレス工場によって音が違うことを経験したアーティストやエンジニアが工場やラインを指定することがあったそうですが,Blu-spec CDはプレスマシンごとの品質のばらつきはどの程度ありますか?
【A】CD登場初期にはライン毎のCDの品質のばらつきが顕著だったため,たとえば奥田民生氏や大滝詠一氏らはプレス工場を指定して納品をしていました。しかし,5年前ほどから,SONYではプレス品質向上を目的として,全てのプレスマシンに一台ずつアイソレーショントランスを導入して工場全体の電圧変動を極力抑える等の対策を講じてきました。その結果,現在ではプレス工場の指定はほとんど無いほどに,品質が均一化・向上しています。

▼Blu-spec CD技術の展望
【Q】価格が高く設定されていることについてはどのようにお考えですか?
【A】制作側でCDの値段が上がることに抵抗を持っている方はいらっしゃいます。コストはできれば下げたいものの,現状ではどうしても制作方法が非常に高コストにならざるを得ません。たとえばBlu-spec CD用のポリカーボネートを装填するマシンは制作のたびに部屋に搬入し,そのたびに清掃しなければならないといった状況です。

【Q】Blu-spec CDの登場により,SACDは生産を終了させる予定はありますか?
【A】SACDの生産を終了させる予定はありません。Blu-spec CDと比べても,SACDの音質上の優位性は揺るがないと考えています。

【Q】現在は限定的に生産しているBlu-spec CDですが,最終的に全CDをBlu-spec CD化する予定はありますか?
【A】売り上げ次第では,全てのCDをBlu-spec化することもありえます。

■ 以上です。なかなか興味深いお話をきくことができました。今回はソニーミュージック コミュニケーションズ執行役員で制作技術本部の渡辺隆志本部長をお招きして行われた企画でしたので,非常に内容の濃いイベントになったように思います。またこのようなイベントがあれば是非参加したいです^^

Blu-spec CDを聴く 2枚目

▼Blu-spec CDの技術的特徴
【Q】高分子ポリカーボネートとありますが,ポリカーボネート自体が高分子素材ではないでしょうか。その趣旨はどのようなものでしょうか。
【A】通常のCDに比べて,高分子度の高い素材を使っています。Blu-spec CD用ポリカーボネートは,通常CDのものとくらべて,成形条件は厳しいものの,成形条件を満たせば成形がしやすいことが特徴で,きれいなピットを作ることが出来ます。

【Q】ピットジッターは具体的にどの程度減るのでしょうか?
【A】たとえば,ガラスCDはポリカーボネートCDに比べてピットジッター値が低いのですが,同じポリカーボネートのCDである通常CDとBlu-Spec CDとを比較しても,測定限界以下程度の違いしかありません。

【Q】ブルーレイレーザーダイオードと光ファイバーを使ったカッティングと,高分子ポリカの採用以外に取り組んだことはありますか?
【A】CD生産上の取り決めのなかできる限りですが,他にも品質向上につながることを実践しています。たとえば,CD表面の膜厚を通常CDに比べて厚くしてあります。テスト用に4種類のCDを作り,比較視聴して複数のエンジニアが好ましいとした数値をもとに調整してあります。

【Q】製品テスト時にはどのようなソースを使って試聴されましたか?
【A】スタジオではボーカルの質感を重視しました。よくリファレンスで使われたのが,郷ひろみのCDです。スタジオでチェックする限りでは,より生の声に近い音になっています。

【Q】SACDハイブリッドディスクと通常CDとではどちらが高品質ですか?
【A】ハイブリッド層は半透過となっているので信号の乱反射が多く,ディスクの品質としては通常CDのほうが高品質といえます。

【Q】Blu-spec CDは楽曲やジャンル毎に相性はありますか?
【A】特定の曲やジャンルを基準として音作りをしたわけではありませんので,得手不得手はなく,あらゆるジャンル・楽曲で高品質化できると考えています。

■ つづきます。

Blu-spec CDを聴く 1枚目

 最近各社が力を入れている高品質CDについて,SONYの方を招いてBlu-spec CDと通常CDを比較視聴するというイベントがダイナミックオーディオ5555HAL3で行われました。
 以前からこうした高品質CDについて関連エントリを書いている者としては是非参加したいということで,参加して参りました。
 今回はこの件についてご報告をしたいと思います。複数回連載です。

 今回は,Blu-spec CD検証ということで,従前一般的に疑問視されていた点についてご説明いただいた内容となります。なお,Q&A方式で記載しますが,やりとりは読みやすいように編集してあります。内容には漏れや私の記憶違いなどがあるとおもわれますので,本件に関するエントリを根拠にSONYに問い合わせをするといったことは控えていただけますと幸いです。

 録音や制作現場にも造詣が深いHAL III島さんのフロアでは,こういった制作側のイベントも企画できればと考えているようですので,ご関心のある方は是非参加してみてはいかがでしょうか。

▼Blu-spec CD企画の背景
【Q】他社の高音質CD製造技術の後に発表されましたが,CDの高音質化の潮流に乗る形で企画されたものでしょうか。
【A】そうではありません。他社の高品質CDの手法もテストディスクを作成して比較しましたが,Blu-spec CDは,SONYのプレス工場からのBlu-ray Discの製造技術を生かせないかという提案をきっかけに独自に企画されたものです。

【Q】企画に当たってこだわったところはどのような点でしょうか。
【A】スタジオクオリティに出来る限り近づけたものを作るためには,ディスクの品質に磨きをかけるのがよいのではないかという考えにたち,音作りの一環としてのディスク製造ではなく,技術的観点からのディスク品質の向上に注力しました。「高音質」ではなく,あくまで「高品質」であるということがポリシーです。

【Q】Blu-spec CD用にマスタリングをするといったことはありますか?
【A】あくまで高品質なディスクを作ることが目的で,音作りのための手段ではありませんので,Blu-spec CD専用のマスタリングを施すことはありません。出荷時には必ずバイナリコンペアを行い,通常CDとバイナリ値が全く同じであることを確認後に出荷しています。

■つづきます。