「正しい音」って何でしょう?

例えば,貴方がクラシックの演奏会に参加したとして,100%楽譜通りに演奏が行われれば良い印象を持つかと問われれば,そうではないこともあると答えると思います。また,そもそも,楽譜は演奏方法の全てを指示しているものではないから,指揮者や演奏者の解釈が反映されるということもご存じでしょう。

実はオーディオにおける再生も似たような状況にあります。この点,貴方は「録音されている音を完璧に再現すればよいのではないか?」と疑問に思われるかもしれません。しかし,実際のところ完璧な再現とは雲をつかむような達成しがたいことなのです。なぜでしょうか。それは,記録されている情報が正しく再現されているかどうかを確かめる方法がないからです。
たとえば,POPSやRockはスタジオ録音です。classicやJazzでも必ずミキシングやマスタリングといった加工が必要になります。こうした加工を経たメディアに入っているデータが真実いかなるものであるかは,我々には読み取ることができません。媒体は問わず,この課題は解決のしようがありません。
他方で,ライブを基準にしようにも,パッケージ用音源の収録時の環境とライブの環境が同じである保証はありませんし,環境が異なるのにマスタリングスタジオの音を再現しようというのも無理があります。

また,音楽再生におけるパッケージメディアによって再現されるものは,理想あるいは妥協の産物としてイメージされた作り物の音の世界であるということも意識すべきです。プロのエンジニアはあらゆる環境で,もしくはターゲットとなる客層が使うであろうシステムにおいて,ある程度の幅を持ってパフォーマンスを発揮するようにパッケージを作るのです。
しかも,これらの音の調整というのはすべて耳で聞いて判断されます。重要なことは,貴方とは感性も趣味嗜好も異なる誰かが耳で聞いて判断したということです。

このように,音楽再生において「正しさ」というものは究極的には存在せず,楽曲に様々な解釈が許されているのと同様にパッケージの段階で解釈が施されているわけですから,それを最終的にどのように聴くのかは,貴方が自由に決めてよいのです。最終的な音の決定権は貴方にあります。貴方の感性を信じましょう。