音質に関する用語がよくわからない?

オーディオファンは時としてワインを品評するかのように,音質について評価をします。しかし,実はオーディオファンと呼ばれる人たちでも,音の違いを認識するための統一した方法を共有してるわけではありません。これは,音楽がもっぱら感覚を刺激して感情を昂ぶらせるというプロセスを経ているためです。

このことは,音楽(音)を聴くことについての問題,それを言葉にすることについての問題の二つを浮かび上がらせます。

まず,人によって耳や脳の働きが異なるという問題,すなわち大切に感じる部分の意味内容や重要度が異なるという問題があります。
例えば,貴方自身,楽器を演奏するとき,歌を歌うとき,それぞれジャンルも含めた得手不得手というのがあるでしょう。同じように,聞き手の感覚も千差万別で,皆さん個性があるのです。感覚的に,好みかどうかという点でずれが生じてしまっていると,なかなか使う言葉の意味内容のすりあわせ自体も難しく,オーディオファン同士でも意思疎通そのものが難しいのが現実です。

次に,感覚を言葉にすること,感覚の変化を認識し共有することも大変難しいという問題があります。
こうしたパーソナルな感覚を言葉を媒介に他者と共有しようとすることはとても難しいということを私たちは知っています。人が愛を語るのに何千年も費やしてきたことを思い起こせば,如何に言葉は私たちの感覚を説明するのに不十分であるかがよくわかります。
極端な話,オーディオファン同士が同じ単語を使って音を解説していたとしても,人によって意味する音が違うことは日常茶飯事だということなのです。あらためて考えてみると,音質に関するオーディオタームというのは全てが「比喩」的色彩を帯びているといえるでしょう。

しかし,全く共感が得られないというわけではありません。私たちが日頃友人や恋人,家族と共感を得るのと同じく,センスの似通ったファン同士であれば,ファジーに意見のすりあわせを行うことができ,達人の域に達すると,おおよそお互いの感想だけでほぼ機器の性格を把握することもできてしまいます。
ただし,そのためには膨大な数の試聴経験と,音楽やコンポーネントに対する深い考察・理解,そして探求心が必要不可欠なのです。

このように,音質に関する用語に正確な定義はありませんが,自由な感覚で貴方の感性を相手に伝えることもまた知的な行為ですから,それ自体を楽しんでみるとよいでしょう。
あなたなりの表現が,とても相手に印象深く心に刻まれることもあると思います。よりしっくりくる言葉を探すのは,宝探しのようなものかもしれません。