Acoustic Reality / eAR1001

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▼PROFILE:
2005年の頭あたりから話題になった,ICEPowerモジュールを使用したD級パワーアンプです。デジタルアンプというのはいくつか種類がありますが、ICEPPOWERモジュールはPWM方式に近いタイプだと考えればよいのではないかとおもいます。
コストパフォーマンスという点についてはかなりの能力を持っており,アナログパワーアンプとの比較でも,ハイエンドと比肩しうると評されることもあります。また,拙宅の場合,低発熱であるという点も非常に魅力的です。アナログアンプを使用していた時期には,夏場は灼熱地獄。まさにオーディオライフの救世主登場でした…。
ICEPower1000ASPの詳細はこちら

▼音質について:
○デジタルアンプならではのハイスピードさ
デジタルアンプとアナログアンプとを比較した場合に最も異なるのが,音の質感です。一般的には,デジタルアンプはハイスピードというか,切れの良い音がでるといわれています。量感や音圧感,聴き応えを求めるならば,デジタルアンプではなくアナログアンプではないかとおもいます。特に,デジタルアンプは基本的に低域がタイトになりますので,柔らかい・ふくよかな質感を求めるとちょっと違ってきてしまうと思います。中域から高域にかけても同様で,厚みがある音ではありません。

○設置でかなり音が変わる
デジタルアンプといえども,設置方法で相当質感が変化します。特に,デジタルアンプは小型軽量化が進んでいるので,筐体が安っぽいモノがほとんどです。そのため筐体を強化するか,足回りを強化してみるのもおもしろいですね。
なお,拙宅のeAR1001はすでに付属の脚部が変更されており,さらにCFRP系インシュレーターを使用しています。

○切れのある高域と,意外と硬くない中域
高域はよく言えば切れのある,悪く言うとちょっとぎらっとする高域ですが,これはSP端子直前にある内部パーツを交換すると改善されるようです。デジタルアンプのイメージとしてありがちな,硬い高域とはちょっと異なります。柔らかい高域ではありませんが,もっとさらっとしていて粒状感は思いの外少ない印象です。
後述しますが,やはりデジタルアンプの最大のキーポイントは低域の質感の問題ではないでしょうか。

○広い音場
特に水平方向の音場はきれいに広がります。縦方向も狭くなる印象はありません。空間表現は総じて得意のようですので,音場派の方は一度は聴いてみるとよいのではないでしょうか。コストの点から考えなくとも,相当優秀な部類に属すると思います。

○決してつまらなくならない中低域
デジタルアンプの低域は,駆動力は感じられるけどリズム感が悪くてノリが悪いというのが一般的な評価のようです(本格的にリサーチしたわけではありませんが)。確かに,以前某社のアンプをお借りしたときには,低域の駆動力は感じられるもののノリが悪く,どうしてもつまらなく感じてしまった事があります。そのときの経験から,デジタルアンプはどうしても中低域のリズム感に問題があるのだと思っていました。
しかし,ICEPowerモジュールを使用したeAR1001はそんなことはないようで,拙宅の場合リズム感はとても良好でした。低域が相当ハイスピードなので,システムの組み合わせによっては低域はやせて感じられる場合もあろうとは思いますが,躍動感はきっちり出してくるのでアナログアンプから買い換えてもさほど違和感はないケースも多いのではないでしょうか。後述するように,問題は最低域にあります。

○駆動力は本当にあるか?
インプレを披露する前に,まずは「駆動力」について考えてみることにします。問題とすべきなのは,「駆動力をいかなる基準で判断するのか」という点です(※1)。
この点について,私は,この駆動力を(1)低域の立上がり・立下りの俊敏さ,(2)低域のスピード感,(3)全体のスケール感、といった項目を基準として総合的に判断しています。従って,私が使う「駆動力」は厳密には「駆動力感」であることを前提に,インプレを読んでいただきたいと思います。
さて,私は,デジタルアンプとアナログアンプの最大の相違点は低域~最低域にかけての方向性の違いにあると考えています。特に顕著な差異が現れるのが,最低域のスピード感と重量感(換言すればピラミッドバランスでの最低域の下支え)です。
eAR1001で一番気になるのは,最低域の下支えが足りない点です。これはショップにeAR1001を持ち込んで某社のトップエンドアナログパワーアンプと比較視聴した際に顕著に感じられたことです(同席したオーディオ仲間の皆さんもおおよそ同意見だったようにおもいます)。
これらを両立させるのは非常に難しく,特にデジタルアンプの場合,スピード感は十分に感じ取れるのですが質量感が足りなく感じられることが多いように思います。他方,優秀なアナログパワーアンプの場合,低域の質量感と駆動力のバランスが取れていることが多く,殊質量感とスケール感については相当のアドバンテージを認めざるをえないというのが率直な印象です(※2)
確かに,eAR1001は既存のデジタルアンプのなかでは優秀な部類に属していると思われます。しかし,それでもデジタルアンプの枠組みとその設計思想の原点の呪縛からは容易に逃れられないということかもしれません。やはり大口径ウーファーを巨大なパワーアンプで鳴らすというのが王道的アプローチなのでしょうか(涙)。

▼その他のコメント:
現在代理店がないので,直販で購入するしかありません。直販ならではの価格設定でしょうから,代理店経由になると価格的メリットはかなり薄くなりそうです。ただ,ICEパワーモジュールの組み込みをした機器は他にも数多くありますし,台湾の某社のものなら販売価格がペア20万くらいですから,中身がかわらないならAcoustic Realityにこだわる必要もない気がします。
ちなみに,ICEPowerの国内代理店であるSANYOからモジュールを取ろうとすると,数百個のが最低オーダーとなるようで現実的ではありません。SANYOももう少し商売上手になればいいのになぁと思うのですが…(もしかしたら販売できない取り決めかもしれませんね)。

※1 そもそも,駆動力の有無は電気的にはダンピングファクターの値やNFBの値等の相関関係で決定されるとする見解もあるようですが(実際は法則として捉えるのは難しいのでしょうか?),実際は聴いて判断することが大半なわけで,私はどちらにせよこの「駆動力」なる単語の意味合いとその判断基準という問題は避けて通れないと考えています。

※2 私が一番感動した某社のパワーアンプの場合,ウーファーの立上がり・立下りを極めて俊敏にコントロールしてくるので,一聴して空気感が一変したかのようなクリアで浸透力のあるサウンドが眼前に展開します。それでいて,いざ最低域が鳴り始めると質量感とスピードの両立した低域が聞き取れ,非常に感動的でした。
もっとも,こうした真の意味での駆動力の余裕さが人によってはわざとらしく感じられることもあるようですから,結局は好みということなのかもしれません(笑)。