【引退】 Chord / DAC64 MK1(最初期バージョン)

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▼PROFILE:
イギリスのプロ/コンシューマブランドのCHORDが生産しているDAコンバーターです。CHORD製品のなかで最も売れているそうで,登場当初のあまりにも凄すぎるコストパフォーマンスは多くのオーディオマニアの間で話題となりました。
バージョンアップを重ねてMKIIが販売されましたが,本モデルは最も初期のモデルで,電源スイッチもありません。デジタル入力は1本のケーブルで192kHzまで受けられる仕様となっており,先進的な設計思想となっています。

▼音質傾向について :
メモリによるバッファ機能(しかもMAX/MIDDLE/OFF可能)が特徴のDACですが,そうした機能以上に素の状態の音質の良さとコストパフォーマンスの高さが話題になった製品です。 元々本格的なオーディオシステムを構築するにあたって,最初に購入したにもかかわらず,今でも決定的な不満点がないというのは健闘しているなと思います(自宅でハイエンドDACと比較試聴した時にはがっくり来てしまいましたが…)。上流の情報量もきちんと捌くことが出来るので,単体で聴いている限りにおいて,ボトルネック感はありません。
不満点があるとすれば,バッファMAXの場合,やや音場の広さに対して情報量不足(イメージ的には,情報量そのものはバッファの有無にはさほど左右されず,音場が広がった分,それを埋めるだけの音の粒子の絶対量が足りない→結果密度感が低下)なので,密度感は得にくいと思います。そこで,例えばMIT等のACケーブルでうまくダンピングを効かせてやることが必要かと思います(※1)。逆に,バッファOFFの場合,ともすれば元気すぎる勢いの良さがあるので,スッキリとしたおとなしめのケーブルで調整してやるといいかもしれません。

○バッファ機能
バッファですが,システムの構成によって有効だったり欠点が露呈されたりと完璧な仕組みではないようです。スイッチがついているというのは,そうした点を考慮して,ユーザーが自由に組み合わせることが出来るようにしたものでしょう(※2)。
具体的には,バッファ最大のときには高域の分解能が向上し,音が空間に軽やかに広がり満たしていくといった印象です。音場全体に密度感が出ない代わりに,音そのものの拡散はスムーズでハイスピードなので,良くも悪くも,超高級サラウンドというような感じでしょうか。
しかし,バッファ最大のときの欠点は,音の実体と空間の境界線がぶれやすいということです。特に現代ハイエンド系に代表される空間描写中心のシステムの場合,バッファ最大のときの輪郭のぶれは気になってしまいそうです。ぶれと表現すべきか,音像の散りやすさと表現すべきかは若干悩ましいところですが,とにかく音像の密度が薄くなりやすいので,音像がしっかりまとまる要素を何かしら組み合わせてやる必要があるとおもいます。
一方,バッファOFFの場合には,中低域がしっかりとしていて,滑らかな階調表現です。帯域間のつながり方に違和感がなく,しっとりとして解像度を強調することがありません(決して解像度が低いということではありませんが相対的には若干落ちます)。
バッファの違いはかなり大きく,異なるDACのように変化しますので,うまくシステムにあわせて組み合わせると楽しいですね。

○電源スイッチ無し
私が所有しているのは,最初期の製品ですので電源スイッチがありません。電源スイッチがないということは当初購入者の大半が熱問題もあり心配していたようですが,実際熱が原因で保証期間内に問題が発生する設計にはなっていないようです。あたりまえですけどね(笑)。むしろ余計な接点がない分,現行モデルにはない利点なのではないかと思います。
実際,DAC64故障中にお借りしたMKIIはちょっと拙宅のシステムとは相性がいまいちのようで,根本的にS/Nが悪い印象をもってしまいました…。

○クロック入力無し
また,クロック入力が無いという点も今のトレンドとは若干ずれている気もしますが,DAC64はバッファに貯めた時点でクロックを打ち直していることもあり,クロックについて全く考えていないということではありません。もっとも,バッファがあればクロックは不必要だというのは,ややアバウトな議論だとはおもいます(Wadiaの例を鑑みるに)。

○PSE未対応
私がTimeloadに連絡したときには,PSE未対応とのことでした。電源スイッチがない機器はPSEを取得できないとか説明してましたが,経産省に電話してきいてみたら,そんなことはないと言っていましたけど…。今はどうなんでしょうね。なお,MKIIはPSE取得しているようです。でないと販売出来ませんからね(苦笑)。

▼それ以外のコメント :
ある日chatの皆さんとDACについてお話していたところ,CHORDのDACがすばらしいという話になり,一路shopのほうに。そこで聴いた本格的なハイエンドのシステムの音が,私を狂わせるきっかけとなったといっても過言ではありません。
確かに,CHORDのDAC64はコストパフォーマンスを考えるとすばらしいものをもっていると思いますが,それ以上にハイエンドに触れるきっかけを作ってもらった製品でもあり,思い入れは人一倍です。

※1 もっとも,既に拙宅のDAC64は相当の電磁波対策が施されており(もちろん戻せる範囲での対策です…),オリジナルとはかなり異なる音になっています。電磁波対策をしたDAC64は,より情報量が増え,レンジが広がり,精緻な音場を展開してくれますが,若干クールになりました。ぶっちゃけ別物になっているので,現状DAC64をあれこれ語る立場にないんですが,一応上流から順番に書くつもりなので…。

※2 たとえば,他の機器とのかねあいで選択は異なることでしょう。自宅でEARの312とAyreのK-1xを使ってバッファ最大とバッファOFFを比較した時の話ですが,EAR312ではバッファOFFのほうが好みでした。バッファ最大にしてしまうと高域ばかり分解能を強調した音になってしまい,中低域以下の帯域との乖離が気になってしまいました。逆に,AyreK-1xのときには,バッファ最大のメリットが十分に発揮され全体域で違和感を感じることはありませんでした。ただし,輪郭のブレと階調表現の点で全く問題がないともいえませんが,メリットのほうが大きかったと判断しました。現在は電磁波対策も完了していることもあり,バッファMAXでの輪郭のブレ等も感じられなくなり,高域と中域以下のつながりも良好になりました。