PCトランスポート模索編

本項はPC自作にある程度習熟して,wikipediaや各社PC系サイトを巡回して自分で調べられる能力のある方向けに,PCトランスポートを自作する際に参考となる点について,私見を交えつつ情報を提供するものです。
PC自作が慣れていない方は,先に入門編を参照し,製作例を真似て作ってみることをお勧めします。
自作PCの世界は流れが速いので,ちょっと自作から離れるとあっという間においていかれます。そんな場合でも対応できるように,個別具体的な製品名を挙げ るのは極力避け,PCオーディオ的発想・視点を紹介することで,いつでもある程度品位の確保されたPCトランスポートを作ることができる資料となることを 目標としています。
本項が「模索」編となっているのは,「これが正解!」のように断言するのではなく,皆さんと一緒に考えていくことができればという個人的な意図によります。
PCオーディオの世界は目的と環境に合わせてフレキシブルにシステムを構築できることが魅力です。私と一緒に皆さんの柔らかい頭で考えてみませんか?

基本的な考え方

▼様々なアプローチが許されているのがPCオーディオの懐の深さ

前項でも言及しましたが,自由に環境にあったスタイルでPCを構築できるのがPCオーディオの楽しさですから,様々なアプローチがあってよいと思います。
また,音の善し悪しという主観的な評価を軸に取り組む限り,理論的・論理的な正しさは脇役となってしまいますから,音の「気持ちよさ」を追求するのならば益々好きなように取り組むべきだとおもいます。

▼PCトランスポートを探求するスタンスを固めよう

まず演繹法的アプローチ(理論的に正しいと思われる状況をどのように具体化する方法)か帰納法的アプローチ(より心地よい音がする組み合わせを重ねていく方法)か,どちらをベースとして取り組むのかを決めて,立ち位置をはっきりさせたほうが気持ちが楽になるとおもいます。
オーディオは気長な趣味ですから,今すぐ最高を目指すのではなく,過程を楽しむ趣味ともいえます。迷ったときに思考をリフレッシュさせるためにも,自分がどういうスタンスでPCトランスポートに取り組むのかを考えてみるとよいのではないでしょうか。

▼理想状態に近づけてみる

さて,私はといいますと,まずは理論的に理想状態といえるのはどういった状況なのかを考え,次に具体的にどうすればそれに近づけるかというアプローチ(演繹法的アプローチ)が効率的ではないかと考えています。

ではPCトランスポートとして何が理想かといえば,電源がクリーンで,放射されるノイズが少なく,正確なクロックで原信号とバイナリが一致した状態でデジタル出力できることです。
次に,これを具体化させるにはどのようにすればよいのかを考えてみたところ,おおざっぱに言えばPCの余計な機能をそぎ落とし,スペックを下げることを念頭にギリギリのラインを狙ってみることにしました。
やや乱暴ないい方をしてしまえば,その結果出てきた音が好みであろうが無かろうが,合理的な推論に基づいた設定の結果聞こえてくる音というものが,PCオーディオが元来持つ音なのだろうor元々媒体に記録されていた音とはこういう音なのだろう,という発想かもしれません。

つまり,PCトランスポート自体での音作りはせずに,あくまでデータを正確に出力する装置という見方をしているということです。
音作りはトランスポート部だけでなく様々なところでできますし,トランスポートはCDに記録されていた情報を余すところなく取り出して送信する&ほかの機器への影響を極力減らすという役目を負わせておけばよいように思います。

PCトラポと市販CDTとで優劣を付けるのは難しい

PCトランスポートはすごいのでは!と期待している方もいらっしゃるとは思いますし,このページをご覧の方は関心の高い方だと思うので,このようなことをいうのは気が引けるのですが,一般論としてこれを述べるのは非常に難しいと思います。
まれにどちらかが絶対的に優れているといった論調の方もいらっしゃいますが,理論的にクロックジッターの観点から説明し,実証されている方はいらっしゃらないと思います。

ここで「一般的に」と留保するのは,PCオーディオが基本的にカスタマイズすることが前提の分野であって,市販CDPに比べて圧倒的に多い調整項目 をいかに駆使して自分好みのトランスポート/プレーヤーを作るかが肝心なジャンルだからです。特に,何も工夫をしていないPCを1台用意して,それに適当 なUSBオーディオ機器をつないでも,市販のCDプレーヤーには敵わないでしょう。

しかし,カスタマイズをする際に気をつけなければならないのは,聴感上好ましい状態が理論的に正しい状態とは限らないことです。PCオーディオの パーツ選択を聴感上の結果で行っていく場合には,どこまでも好みに近づけていくアプローチであることを忘れず,それが絶対唯一の方法だと思い込まずに,柔 らかい頭で考えていくことが重要ではないかと思います。

PCトラポの限界と可能性

実際問題として,市販品のみでの構成では限界があるのは事実で,何かしら自分で工夫しなければなりません。問題はその工夫の仕方です。結局は手間暇 かけないとよくならないのは間違いありません。そこに,PCトラポの可能性があるということもまた事実ですが,楽して良い音がでるわけではないのは,昔から変わらないのではないかと思います。

しかし,近年のデジタル機器は,ブラックボックス化が進み,ユーザーが介在する余地が奪われてしまいました。もっといえば,ケーブルをとっかえひっかえ,インシュレーターをとっかえひっかえするくらいしかなかった訳です。
これに対して,突き詰めようとすると現状ワンオフ的改造に至ってしまうという難しさはありますが,ハイエンドPCオーディオはユーザーがより主体的にオーディオ機器と関わることを可能にしてくれる新しいジャンルとして開花する可能性を秘めているといえるでしょう。