失敗しないクロック選び

PCオーディオで非常に重要なクロックについて触れてきましたが,今回は(精神衛生上)失敗しないクロック(マスタークロックジェネレーター兼ディストリビューター)選びについて書いてみたいと思います。

性能を比較しよう

クロックの周波数偏差を気にする方は…

ppmの値が低いものを選んでください。余談ですが,私は余り気にしません(笑)。1年間音楽を聴き続けて0.1%テンポがずれたからって気づいたり出来ません…。

クロックの位相雑音を気にする方は…

こればかりは素人には調べようがありません。測定する機器は1000万円クラス,レンタルするだけで1ヶ月100万円くらいします。ルビジウム発振器あたりだと定格表に記載があるものもあります。
個人レベルで出来ることと言えば,せいぜい使っている発振器の型番からメーカーに特性表を要求するくらいが関の山で,それ以上は無理です。メーカーに位相雑音の値を掲載するよう要望を出し続けると良いかも知れませんが,上記の理由からメーカーでもなかなか測定器を持っていないようです。
DENONを皮切りに,TADからの低位相雑音を謳い文句にした製品が登場してきていますので,今後のトレンドであることは間違いがないでしょう。

なお,10MHzのRb発振器やGPSレシーバーなどでは,位相雑音の値を示すのが当たり前になってきていますので,低位相雑音タイプのものを選んで購入することができます。

クロック信号の反射を気にする方は…

機器のBNC出力がインピーダンスマッチングをとっているかをメーカーに確認し,ケーブルもイン ピーダンスを保証するもの(つまり,ケーブルもプラグも当該インピーダンスを保証するもの)を使いましょう。インピーダンスは周波数に応じて変わる特性を持っていますので,デジタルオーディオの帯域(数MHz)の帯域で75Ωになっている必要があります。
なお,RCA,AESはインピーダンスマッチング の点では明らかに不利です。Word Clockなら75Ω,10MHz信号なら50Ωです。プラグもケーブルも構造が違います。

しかし,良い音だからインピーダンスマッチングとれているだろうとか,インピーダンスマッチングとれているから良い音だろう,といった単純なものではないのがオーディオの悲しいところです。特に,海外オーディオブランドのデジタルケーブルはほとんどインピーダンスがとれていないのですが,不思議と音は良く感じたりするので…。

電源の方式が気になる方は…

まず,プロ機系のクロックはほとんどがACアダプタ駆動もしくはスイッチング電源です。リニア電源がよいという方はコンシューマ機系のクロックをどうぞ。
世界中に同じ製品を出荷するリスクを考えると,スイッチングノイズに目をつぶってでもスイッチング電源にせざるを得ないという事情もあるようですが,スイッチングだからジッター値が高いかといわれるとそうでもありません。ものによってはリニア電源のトランスの磁束漏れの影響で位相雑音が増加するケースもあるようです。

性能保証を気にする方は…

クロックはきちんと定格で動作しているか判然としない機器ですから,校正設備がメーカー・代理店にあるか確認されると良いでしょう。校正設備がないということは,作ったら作りっぱなし,投げっぱなしということです。最悪,故障しているかチェックもできないということです。
Wordsyncのディストリビューターの長期周波数安定度が悪いのはまだ修正の余地もありますからよいですが,10MHzの発振器を売っているところが校正設備を有していないのは問題外でしょう。

他社製品との相性が気になる方は…

10MHz入力端子があったとしても,電圧のロックレンジが問題になることがあります。ルビジウムやGPSを使う予定のある方は,クロックジェネレーターのレンジが何Vp-pかをメーカーに問い合わせましょう。原子発振器orGPSをつけても,ロックレンジ外の出力波形になってしまう場合正常にロックしません。
ちなみに,ESOTERICはきちんとロックレンジの記載があります。

現在お薦めの機器

外部クロック製品単体としての能力(第一に波形のきれいさ)を考えると,最もお勧めの市販品はESOTERICのG-03Xではないかとおもいます。10MHz入力のロックレンジも比較的広く,他社製品でも問題なくロック可能なところも悩ましくなくて良いですね。
惜しいのは外部クロック入力にSyncしているのかどうか判然としないインターフェースでしょうか。

余談ですが,私は付属の脚の音が苦手なので,私ならインシュレーターは別途用意します。もちろん,音色の好みはあるとおもうのですが,それと外部クロック機器としての能力は別問題ですね。音色の好みでざっくり決めてしまうのもよし,性能重視で他で調整するもよし,あとは考え方次第です。
クロック系機器は悲しいかな電源ケーブルやセッティングで音がかなり変わるので,私なら性能で選んでしまって,後は使いこなしで音質の調整を試みます。それくらい,クロック系の機器はパッと聴きの印象があてにならない機器でもあります。
私がクロック系機器を使う場合,散々挑戦してもどうしてもうまくいかず,それでいて断然好みの音質の機器があれば,そちらに乗り換える感じで考えています。

10MHzのマスタークロックジェネレーターをさらに追加する場合には,Antelope AudioのOCXが良いでしょう。ただし,10MHz入力はインピーダンスが75Ωですので75Ωのジェネレーターを使わないと反射が生じることに注意してください。場合によってはインピーダンス変換器が必要です。
また,ロックレンジが非常に狭いようなので,他社製ジェネレーターと接続した場合ロックしないことも考えられます。その場合は出力電圧を調整できる機能があるジェネレーターを用意する必要があるでしょう。