ハードウェア編

ハードウェア対策の基本的な方針

本項目の大半は,ネットワークオーディオプレーヤーをお使いの方には殆ど関係のない項目です。自作PCから何らかの音声信号を出す方法を模索される方向けの資料となっていますが,Macをお使いの方も,どのモデルを選ぶべきかを検討する際に多少参考になるかもしれません。

▼オーディオインターフェースを使うこと

とにかく音質最優先設計をするのであれば,DTM向けオーディオインターフェースを使うことは外せません。これらは本来は音楽制作目的の機器ではあるものの,メーカー間で音楽制作の要求を満たすだけの利便性だけでなく,実証的な性能追求競争も行われてきました。結果,様々な音質上の配慮がなされているサウンドデバイスといえるでしょう。特に,デジタル出力の品質に着目した場合,オーディオ機器と比較して安価に高品質なものが多くみられます。
また,近年では,ピュアオーディオ向けUSBオーディオデバイスの高音質化競争が盛んに行われており,オーディオインターフェース以外の選択肢も登場しそうな情勢です。

▼電源に高品位なものを使うこと

スイッチング電源は電源によって負荷に対する強さやリップル量が全く異なるものがおおく,国内で流通しているPC用電源は特に電源の質に差があると言われています。電源にかけるコストは惜しまず,出来るだけ高品質なものを使いましょう。具体的な高品質電源の選び方は別ページでご紹介します。

▼低消費電力なデバイスを使うこと

高品質な電源を使っていても,電力を消費するデバイスがそれぞれ高消費電力で電源に負荷を与えてしまっては意味がありません。なるべくクリーンな電源をオーディオインターフェースのために供給できるように環境を整えるのが正攻法です。

【参考】
○消費電力 – usyWiki
http://pc.usy.jp/wiki/index.php?%BE%C3%C8%F1%C5%C5%CE%CF

▼低発熱なデバイスを使うこと

PCが熱を持てば持つほど,個々のパーツ(抵抗やコンデンサ等)の特性は悪化(変化)していきます。特に電解系のコンデンサは劣化が早まってしまいますので,なるべく低発熱なデバイスで組めるようにしましょう。低消費電力なデバイスは結果的に低発熱なことが多いので,基本的には低消費電力なものを選ぶということで良いと思います。
低発熱なデバイスを選択するメリットに,静音化があります。あまりに高発熱なデバイスは冷却が間に合わず,最悪PCがストップしてしまうこともあり得ますが,低発熱なデバイスを選んでおけば冷却用ファンも低回転,低騒音のものを使う事が出来ますし,場合によってはファンレス動作も可能です。リスニングルームのS/Nを良くすることも音質向上の一つの方法といえるでしょう。

【参考】
○部品の知識
http://www.gem.hi-ho.ne.jp/katsu-san/audio/parts.html
○1 . アルミニウム電解コンデンサの概要 P.19
「アルミニウム電解コンデンサの寿命に影響を与える要因は温度、湿度、振動、等色々ありますが特に温度による要因が大きく温度が高いほど寿命は短くなります。」
http://www.nichicon.co.jp/lib/aluminum.pdf

▼低クロックなCPU,RAMを使うこと

CPUにせよ,RAMにせよ,高クロック化によってPCによる映像処理等のマルチメディア対応は急速に進化を遂げましたが,特にステレオでのオーディオデータ再生という点に絞って考えると,現状の高クロック化はもはや意味をなさず,むしろデメリットとなりつつあります。
実際DAWソフトですらステレオ再生なら500MHz程度のCPUクロックで動作しますし,それでもCPUへの負荷は数%しかありません。現状であれば,CPUのスペック的にはAtomで十分過ぎるほどで,殊ステレオ2ch再生であるならばDualコアやQuadコアは不要というのが私の立場です。

▼EMI障害が起こりにくい物を使うこと

電化製品全般は大なり小なり電磁波を空間に放出するわけですが,環境によってはその影響が再生音にも現れることがあります。PCそのものもパーツ構成や対策の仕方によっては電磁波を高いレベルで放出することになりますので,電磁波の放出レベルが低いパーツでPCを構成することは非常に重要です。VCCIやFCCのClassBを取得しているかどうかは,電磁波障害を低く抑える一つの目安になるでしょう。

▼ソフトウェア対策も平行して行うこと

これらのハードウェア選びが先行しすぎると,Windowsを標準状態で使った場合にOSのパフォーマンスが十分に得られない可能性があります。
PCトランスポートとしての利用であれば,極力OSの機能は削ってしまい,音楽再生特化マシンとして運用することで,安定動作と高音質が両立するようになります。

おおざっぱにまとめると

以上をまとめると,電源は負荷に強い高性能なもの(ノイズ対策ができていて,電圧安定度の高い物)を,その他の機能は低機能なものを,ということになります。機能的,性能的な部分はギリ ギリまで削って必要最小限度のものだけ揃えるのが,素性の良いハードの組み合わせということになるでしょう。

各PCオーディオ用ハードウェアの重要度はどの程度?

あまり豊富ともいえないのですが,個人的な経験から述べますと,(1)オーディオインターフェース,(2)電源,(3)マザボ,はかなり音に影響します。こ れらが率先して吟味されるべきで,これらをうまく選択できれば,その他の要因での変化が容易に感じ取れる,といったところでしょうか。
特に,経験上は,オーディオインターフェース(ひいてはオーディオシステム)がプアですと,何をやっても音の変化がぼんやりとしか感じられないなんてこともありました。

まず,オーディオインターフェースについてですが,私としては,現時点ではやはりDTM用に用いられている機器が一歩先をいっている印象があります。これはハードウェア的にもコストがかけられる状況にあるということかもしれません。USBオーディオ機器を絶賛する方も多いのですが,そういう方のRMEやLynxのオーディオインターフェースを使ってみた感想はちょっと興味があるところです。
あと,オーディオインターフェースはやはりWordsyncしてはじめて真価が問える製品だと思います。単独で使っている状態での評価も参考にはなりますが,安価にWordsyncを前提としたデジタルオーディオシステムが構築できるのがオーディオインターフェース導入の魅力といえるでしょう。

これに対して,電源やM/Bは吟味すべきといったところで,なかなか聞き比べるのは難しいといえます。私も自宅ではない場所でATX電源を5種類ほど比較試聴したことがありましたが,あまりに音が違うことに驚きました。あいにく型番等々覚えていないので,皆様の参考にはならないのですが,電源に拘るだけのことはあるということは申し上げておきたいと思います。
もちろん,ATX電源自体が駄目だという主張もあろうことかとは思います。その場合,安定化電源を組む事になりますね。
しかし,その場合低消費電力が前提の設計になりますが,たとえばノートPCでの音楽再生の場合,電源は容易に直流安定化電源に変更でき るというメリットがある反面(内部的にはDC-DCコンバーターが使われるのですが),メモリ以外のパーツの変更が効かないというデメリットがある わけです。PCオーディオのマシン構成は電源という側面だけではなく全体的なバランス感覚が重要ではないかと感じています。
私の場合は,市販ATX電源を改造した ものを使っていますが,消費電力的にはワットチェッカー基準で50W程度なので,さらなる高効率&低消費電力化を狙っていきたいところですね。ATXのマ ザーボードですから,ドロッパ式直流安定化電源を何台もつなげるというわけにはちょっといかないです。

電磁波対策の指針

日頃オーディオのノイズ対策を入念にされている方でしたら,ノイズ量の大小で音がどの程度変わるのかなんとなく感じ取られていると思います。最近は,オーディオ機器そのもののノイズよりも,PCや家電製品から発せられるノイズの対策のほうが遙かにやっかいな感じです。
そこで,素人的にできる電磁波対策としては,まず電磁波の放出が少ない機器を選んでみると良いと思います。いかに入念なノイズ対策を施したとしても,ノイズの発生源を絶つ方が根本的解決といえるでしょう。

▼ノイズ放出の少ない機器の見分け方
ノイズの少ない製品の簡単な見分け方としては,使っている機器がどのような規格を取得した製品かを調べる方法があります。特に,VCCI ClassBかFCC ClassBのどちらかを取得しているかどうかを調べてみることをおすすめします。

▼VCCIってなに?
VCCIとは,VCCI協会が定めた,機器が出す電磁波のレベルを規定した規格です。
実は,日本は電化製品に電磁波規制が法定されておらず,VCCIは日本の業界団体の自主基準で,かつメーカーが任意に取得する規格となっています。
そのくせ携帯の電磁波でマスコミが大騒ぎしたりと,日本は変な国なんです。日本に入ってくるPC用スイッチング電源に粗悪なものがあるのは,法的規制が非常に緩いということも理由の一つでは無かろうかと思います。
これに対して,アメリカではFCC規格(電磁波に関する規格),EU圏ではCE規格(電磁波を含む総合的な規格)を取得しなければ電子機器の販売ができません。
VCCI,FCC,CEはそれぞれ測定法や基準に差異があり,輸出する製品は輸出先の地域の規格に適合させなければなりません。

▼ClassAとClassB
また,VCCIおよびFCCについては,ClassAとClassBがあり,ClassAは商業用,ClassBは家庭用となっています。ClassBのほうがClassAよりも電磁波規制が厳しく,ノイズ対策という点ではClassBの機器を選ぶとよいでしょう。
ただ,ClassBの機器は比較的高価だったりしますので,資金的に余裕がない場合には,RoHSを無視して鉛板でケースを覆ってしまうという手もありますw

VCCI規制の詳細についてはこちら[PDF]がわかりやすいです。Class表示がなくてもVCCIマークの表示があればClassBとなります。

▼対策のポイント
最近は各家庭に無線LANルータが普及していますので,まずはここからチェックされてみてはいかがでしょうか。HUBも案外ノイズを出しているケースがあるようです。
PC関連のネットワーク通信機器が出すノイズはアマチュア無線をされる方にはわりと切実な問題のようですので,オーディオにも有効な対策になると思われます。拙宅も随時ClassBの通信機器にリプレース中です。