CPU

オーディオに最適なCPUの選び方

音楽再生にマシンパワーは不要

そもそも,2ch分の音楽再生にはマシンパワーはほとんど使いません。複数の処理を同時に行う必要がないので,DUALコアもQUADコアも不要です。シンプルなシングルコアで,消費電流量の少ないものを選ぶのが基本となります。
消費電流量の少ない物の見極め方はTDPという値の低さを調べます。

DAWソフトを使う場合でも,DTM用途であればトラック数が多くなり同時に数十のトラックをミキシングする,といったこともありえますので,CPUパワーやHDDの速度が求められる場合が多くなります。
しかし,聴き専である場合には,トラック数は通常LRのみですし,DAWソフトを使うとしてもマシンパワーは不要です。

合い言葉は「ロースペックCPU」

DAWソフトであっても,おおよそCPUのクロックは500MHzでも動作に支障はありません。1GHzあれば何がおきても大丈夫でしょう。2GHz以上になってしまうと,逆に音質上はおそらく余りよい結果を生まないでしょう。
TDPの低さや動作時の省電力を重視するならノート用CPUを流用するのもよいでしょうし,中古の古めのCPUに挑戦するのもよいとおもいます。

再生フォーマットとマシンパワー

基本的に,大多数のオーディオファンの方はステレオ2ch再生用システムを所有し,CDをメインに聴かれると思います。

CD規格のデータを再生する場合,1411.2kbps(bpsとはビット パー セコンドの略です)のデータ通信が行われるわけですが,映像処理に比べると非常に少ないデータ量といえます(たとえば,地デジ放送は13000kbpsく らいあります。Blu-ray Discですと30000kpbs前後です)。
ちなみに,24bit96kHz 2chのデータですと,4608kbpsとなります。24bit192kHz 2chで9216kbpsですね。また,マルチチャンネルになると,16bit48kHz 5.1chですと4608kbpsになります。

一般にCPUのパワーを食う状態というのは,演算が必要な場合です。たとえば,16bit44.1kHzのデータを24bit96kHzにリアルタイムエンコーディングしつつ再生するような場合には,確かにCPUパワーが必要になります。
しかし,データを右から左に受け渡すのにパワーは必要ありません。実際,500MHz程度の周波数で動作するシングルコアCPUを使ってDAWソフト上で16bit44.1kHz 2chのデータを再生しても,CPUへの負荷はおおよそ1%~4%の範囲に収まります。
むしろ,データ量が影響するのはレイテンシのほうでして,データ量が倍になればレイテンシの設定も倍にしなければなりません。一般的に,ハイビット・ハイ サンプルレートのデータを再生して音が途切れることがあるとすれば,それはレイテンシが少なすぎるからであって,CPUパワーが足りないからではありませ ん。

拙サイトでDAWソフトを推奨する理由は,一般にDAWソフトがASIOドライバとの連携に優れる点,結果レイテンシも低く抑えることができる点にあります。
DAWソフトをPCM2chの再生に特化するという使い方は,開発側からは念頭に置かれていない使い方なので,ありがたく使わせていただきつつ,環境に最適化する作業が必要になる,というのが現状ではないかと思います。

DTMの世界では低レイテンシ=正義だと言及しましたが,わかりにくいかもしれないので補足しますと,DTMの世界においては,レイテンシは音信号やMIDI信号の遅延として問題になります。

これだとどういうことかわかりにくいですが, 要するに,シンセひいたら鍵盤を叩いた後に音が出る,ギター弾いたら弦をはじいた後に音が出る,ということです。演奏をしない方でも,これは微妙だ…とお思いになることともいますが,演奏する方にとっては死活問題ですね。とにかく非常に気になるという声が多いです。
このように,伝統的には(そして現在も),オーディオインターフェースのレイテンシはこうした演奏時の音の遅れとして問題になっているため,とにかく低レイテンシの環境が望ましいわけです。

逆に,DTMの世界では,レイテンシの大小で音が変わるといった議論はほとんどされていません。
これは,実用性の問題の方が遙かに大きいのと,仮にレイテンシで音が変わるとしても,音そのものを加工した方が遙かに大きく変化させられ,また細かい変化をつけることが可能であり,レイテンシによって音を調整すること自体がナンセンスだからです。他方,こと聴き専の場合には,レイテンシの大小は実用上全く問題になりませんから,これで音の変化を楽しむというのも趣味の世界としてはありだとおもいます。

議論状況

大きく分けて,ひたすら低性能低消費電力を追求する立場と,ある程度の高性能CPUを求める立場があります。
前者の立場からは,現在のCPUの性能は音楽再生において必要十分であり,TDPが最も低いものを選ぶのが結果的によい,という説明になり,後者の立場からは,CPUのTDPは一部の高性能モデルを除いては大差が無く,むしろHTT(ハイパー・スレッディング・テクノロジー)や物理的にコアを分けて音楽再生専用コアとその他の処理をするコアという風に分業させるのが望ましいという説明になります。

そのほか,ある程度の高性能CPUを求める立場には,リアルタイムアップサンプリング処理を行うためにCPUパワーは必要不可欠であるという考え方もあります。これはトランスポートとしてのバイナリ一致性能にはこだわらずに,デジタルフィルターの欠点を補うためのアップサンプリング処理を施した方が合理的だという考えが根底にあります(もちろん理論は抜きにアップサンプリングしたほうが音が好みだから選ばれる方もいます)。

なお,RMEからFireface UCが登場した際,「Fireface UCの機能をフルにご活用いただくためには、Core 2 Duo CPU以上のコンピュータが必要です。」とのアナウンスがあったため,高性能CPUが必要なのではという話もありましたが,これはマザーボード上の「ICH7コントローラに問題がある」ためにDPCレイテンシ(デバイス間のやりとりに遅延がでる現象)が発生することが直接の原因であり,ICH7以外のIntel製コントローラ(ICH8やICH9など)を使えば,CPUの性能とは関係なくDPCレイテンシは問題にならないレベルになると考えられます。
http://www.synthax.jp/fireface-uc.html

【参考】

○8.CPUの音質
http://kanaimaru.com/pc5_yakipaso/pc5-8.htm
○オーディオ機器と構成技術 CPUは速いほうが良いか遅い方がよいか?
http://www.multicpu.jp/audio/audio-2.html
○2.HTPC_Parts
http://naotake.xxxxxxxx.jp/HTPC_Parts.html