電源

電源の選び方の基本

電源ユニットで恐ろしく音が変わる不思議

PC用スイッチング電源はとにかく各社各様に音が違います。4種の電源を比較試聴したことがありますが,非常にパワフルで躍動感溢れる電源もあれば,スッキリとしてスピード感のある電源もあり,あまりに違うので,この時点で「PCの音」って何だろう?という感じでした(苦笑)。
実際,電源の取り付けは結構手間ですし,PCの電源ユニットを比較試聴してみた方というのはそう多くはないのではないかと思いますが,どうもM/B上でDC/DCコンバーターを経由するといっても,その前提として電圧値がきれいに適正値で出せているのかということがとても重要なようです。主に5V(PCI),12V(CPU,VGA等)ですね。

お勧めのATX電源メーカー

電源選びは非常に難しいです。個人的にはAntec,Seasonicのどちらか(ただし最低価格帯は除く)がお薦めですが,ハイエンドクラスならPC Power&Cooling,Zippy,NIPRONの自作PC界隈では評判がよいですね。PCオーディオ界隈ではNIPRONの電源が高い人気を誇っているようです。電源ファンが交換できるからでしょうね。ハイエンドクラスのものは冷却ファンが非常にうるさいので,冷却ファンを取り替えるのは必須です。
なお,AntecのPCケースをお持ちの方は,CP-850が大変素晴らしい測定結果を出していますので,こちらもお薦めです。

ACは100Vと200Vどっちがいいの?

スイッチング電源は基本的にACの電圧が高いほうが電源への負荷が少なくなるそうです(電流が減るため)。
ですので,可能であれば200Vを専用にひっぱってやると良いと思います。難しいようでしたら,200V~240Vにトランスで昇圧してやるのも一つの方法でしょう。
アイソレーショントランスを使って昇圧する方法は,トランスによる絶縁効果(静電結合容量の低下)とノイズ減少も期待できるので,一石二鳥です。

ATX電源自体をやめるという選択肢は?

以前自宅ではない場所でATX電源を5種類ほどまとめて比較試聴したことがありましたが,あまりに音が違うことに驚きました。そこでやはり頭によぎるのが「そもそもATX電源自体が駄目なんじゃ…?」という考えです。そうなるとノートPCを使って電源を自作したほうがいいのではという発想になってきます。
しかし,ノートPCでの音楽再生の場合,電源を自作するという限定がつくものの直流安定化電源に変更できるというメリットがある反面(まあ,内部的にはDC-DCコンバーターが使われるのですが),メモリ以外のパーツの変更が効かないというデメリッ トがあるわけです。
PCオーディオのマシン構成は電源という側面でみても,一長一短でバランス感覚が重要で,電源だけで全てが語れるものでもありません。
私の場合は市販ATX電源を 改造したものを使っていますが,消費電力的にはワットチェッカー基準で50W程度なので,さらなる高効率&低消費電力化を狙っていきたいところです。 ATXのマザーボードではドロッパ式直流安定化電源を何台もつなげるというわけにはちょっといかないですが,Mini-ITXのAtom系マザーであればシリーズ式の直流安定化電源を使うという手もありそうです。

ATX電源をPCオーディオ的視点で見る

ATX電源は毎月新製品が発表され,製品寿命が大変短いことで知られており,短期間であたりをつけて製品の良し悪しを判断する必要に迫られることがよくあります。実際の音質傾向は聴いて判断する他ないわけですが,そうはいっても粗悪な電源はなるべく避けたいものです。
というわけで,web上にあるデータを見ておおざっぱにATX電源をふるいにかけることが出来る点を挙げてみました。一つ目が出力(直流)のリップルの少なさ,二つ目が入力(交流)の高調波歪みの少なさ,三つ目がスイッチングノイズの少なさです。

リップルが少ないと何故良いか?

この場合のリップルというのは,本来一定であるべき直流電流の電圧が波打ってしまう状態をいいます。リップル分はどこかで吸収・除去する必要があり,一 般的にはコンデンサ,レギュレーターやオペアンプなどがその役割を担うことになります。一般にその指標を電源変動除去比(SVR)と呼びます。SVRを超 えるリップル量がある場合には,出力信号が変化してしまうので正しい信号再生は望めません。
ATX電源において,リップルが少ない,さらにいえば電圧変動が少ないということは,PCパーツに対する電源供給能力が高いこと,負荷に強いことを意味します。つまり,「PCオーディオの内側に効く」ことが予想されます。
ATX電源の出力にリップルがどのくらいあるのかはオシロスコープで測る他ありません。代表的なサイトとしては,下記のようなサイトがあります。測定方法も様々ですので,色々と見比べてみると良いでしょう。

なお,PC用電圧監視ソフトでATX電源の直流電流安定性をチェックしている雑誌もありますが,あまり正確なデータがとれないようですので,相対的比較にせよあまり信用しない方が良いと思います。オシロスコープを使った同一測定条件下での試験を相対的に比較するのが基本です。

http://www.jonnyguru.com/index.php
http://www.hardocp.com/
http://www.silentpcreview.com/

高調波歪みが少ないと何故良いか?

高調波歪みについてはKIKUSUIの解説ページをご覧頂くのが良いでしょう。高調波歪みが入力にある場合というのは,おおざっぱにいえばATX電源から交流電源(50Hz/60Hz)に対して高調波が流れているということを意味します。
つまり,PC用ATX電源に限らず,スイッチング方式やインバーター方式の電源を使っている場合は交流電源に対して高調波成分を送り出しているということになるわけで,高調波歪みが少ないことは,「PCオーディオの外側に効く」ことが予想されます。
この高調波歪みが多いと,交流波形が汚くなったり,トランスの唸りの原因になったりします。一般にオーディオ機器用電源ジェネレーターというのは,この 高調波歪みとノイズを除去するための機器ですが,交流波形を綺麗にすることにより音質が変化するのはご経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

高調波歪みの測定については,近年の電源であれば,80PLUSの認証機関がその結果を公表していますので,そちらを参照するのが最も相対評価しやすいと思います。

http://www.80plus.org/

スイッチングノイズの少なさをどう見分けるか?

一番調べるのが難しいのがスイッチングノイズについてです。スイッチングノイズは入力側にも出力側にも流れる可能性があるようですが,入力側においては高調波歪みと分けて測定する必要があり,出力側においてはリップルと分けて測定する必要があります。
実際,web上で見られる多くのATX電源の測定においてはこれらを明確に分けて言及することはないので,判断の難しいところですが,オシロスコープの値を見てみるのが最も直裁な方法とは思います。
この点,国内のATX電源製造メーカーの場合は,表記方法は異なるものの明確に分けて表記されており,好感が持てますね。下記はその例です。

https://www.nipron.co.jp/pdf/download/testdata/2005052616240319030.pdf
http://www.tdk-lambda.co.jp/products/sps/ps_unit/una/pdf/una350p_eva.pdf

以 上のように,ATX電源の選び方の一手法について述べてきたわけですが,重ねて申し上げますが,悲しいかなこれらは音質傾向と直接結びつく指標 ではないですから,実際は聴いてみるほかありません(苦笑)。また,ここに挙げた要素で判断するのが音質に対する影響を推し量る指標として正しいという保 証はありません。とはいえ,高調波の垂れ流しは気持ち悪い,リップルでまくりは気持ち悪い,というのは当然出てくる心境だとおもいますので,今回の記事が 皆様のATX電源選びの一助になれば幸いです。

国内のピュアオーディオの世界も自作PCの世界もあんまり変わらない?

違うと言えばもちろん違うんですが,同じだなあと思う部分もかなりあります。

今回ATX電源の情報を収集してみて特徴的だとおもったのは,国内には,ATX電源を客観的に比較しようというサイトはほとんど無いことです。ましてやオシロを持ち出して波形を計測したというサイトは発見できませんでした。
中身開けて,写真撮って公開して,半田付けが綺麗だ汚いだ,電解コンが日本産だ中国産だ,といったところはたまに見かけますし,以前は回路をおいかけて品評するっていうのもありましたが,何故か測定はないのです。好意的に解釈すれば,個体差や測定条件の違いなどがあるなかで,自分が測定した結果が一人歩きするのは良くないと考えている方が多いのかもしれません。

この結果,これはいい電源だ悪い電源だと,バイラルマーケティング的なノリで評価が形成されていくあたり,カカクコムがコミュニティとしても肥大化した理由が垣間見える感じもします。同じようなことは静音ファンの評価についてもいえることで,「静かなファン」というのは実際は客観的に数値で出せるようでそうでもないんですね(音圧周波数特性グラフを表示すればいいかも?)。
最近のオーディオ業界は最近オカルトだプラセボだーと揶揄されがちです。他方,国内の自作PCの世界は,確かに早さだけが勝負ならばベンチマークである程度わかったりもしますが,それ以外の項目はわりと口コミだけで回っている印象なのは,案外オーディオの世界とさして変わらないのではないかと考え直した今日この頃でした。

ちなみに,私は測定についてはちょっと違う考えを持っていて,コンシューマレベルにおいては,結局誰かが最初にはじめてしまえば,それがデファクトスタンダードになるから,あとは誰がやるかというだけだと思っています。
実際,最近はいわゆるジョニグルやSPCRなどの測定結果で話が進んでしまう場面をよく見かけるようになりました。今後ベンチマークソフトなどが使いにくいPC向けパーツの評価はどのような方向になっていくのか,楽しみです。

スペック的にお薦めのATX電源

ATX電源にも色々あるわけですが,上述のように,80PLUSのサイトを見てみたり,その他測定サイトを見てみると評判の良い電源の当たりをつけることもできます。
PCオーディオ的に重要そうなのは,リップルが少ないこと,負荷時の電圧変動が少ないこと,高調波歪み率が低いことがとりあえず思い浮かびます。このあたりを基準とすると,今入手性が良く使ってみたい電源としては以下のような感じになるでしょうか。

基準を一応たててみる

どこまで有効かはわかりませんが…。

  • リップル量が各レールで20mAを切ること(特に低負荷時のテスト結果が重要)。
  • 負荷20%時(主にアイドル時)に全高調波歪み率が10%を切ること。出来れば5%近辺が理想。
  • 標準で電源ファンの回転音が静かなこと。リスニング中に轟音はいけません。

2万円程度出せる方

オウルテック シーソニック電源 Xseries 650W 80PLUS GOLD SS-650KM
オウルテック シーソニック電源 Xseries 650W 80PLUS GOLD SS-650KM
  • メーカー: オウルテック
  • 価格: ¥ 22,593
  • 売上ランキング: 9246
  • おすすめ度 4.0

Seasonic X-650こと,SS-650KMが鉄板でしょうか。リップルも各レール(電源供給ラインのこと)とも20mVを超えないレベルで,全高調波歪み率は 20%負荷でも10%を切るのでそこそこ優秀,50%負荷では5%といい感じです。80PLUS GOLD電源でここまで全ての項目でバランス良い成績を収めているものは少ない印象です。実売は22000円程度~。
http://www.80plus.org/manu/psu/psu_reports/SP633_SEASONIC_SS650KM_COMBO_650W_Report.pdf
http://www.jonnyguru.com/modules.php?name=NDReviews&op=Story&reid=169

1万円以下でリーズナブルなものをお探しの方

オウルテック シーソニック電源 520W S12IIシリーズ ATX12V2.2 EPS12V2.92 80PLUS BRONZE SS-520GB
オウルテック シーソニック電源 520W S12IIシリーズ ATX12V2.2 EPS12V2.92 80PLUS BRONZE SS-520GB
  • 価格: ¥ 9,817
  • 売上ランキング: 46580

GBronze S12II 520Wこと,SS-520GB。こちらは負荷を100%近くかけると電圧がかなり下がってしまう問題はありますが,オーディオ用途では基本そのような使 い方はしないので(そもそも500W近くまで食ってしまうマシン構成という時点でかなり絶望的),あまり重大な問題ではありません。
リップルは同社Xシリーズと同程度で,大変優秀です。最近1万円切ってきましたので,お手頃ですね。
http://www.80plus.org/manu/psu/psu_reports/SEA%20SONIC_S12II-520_ECOS%201798_520W_Report.pdf
http://www.jonnyguru.com/modules.php?name=NDReviews&op=Story&reid=185

AntecのTwelve Hundred,P183,P193等のAntecの新ケースを使われている方

Antec 電源 CP-850
Antec 電源 CP-850
  • メーカー: Antec
  • 価格: ¥ 15,849 (11% OFF)
  • 発売日: 2009/03/20
  • 売上ランキング: 26067

Antec CP-850が断然お薦めです。リップルの少なさはこれまでコンシューマ向け電源としてリリースされたもののなかではトップクラス(現状トップ?)。全高 調波歪み率をみても5%程度とかなり優秀な部類。ATX規格でなく,Antecの特定のケースでなければ使う事が出来ませんが,性能は非常に高いと思われ ます。実売価格は14000円程度~。Antecは電源メーカーではないのですが,どういうわけかここのSeasonic OEM電源は総じて低発熱,低騒音で,その点でも好印象です。DELTA OEM電源はちょっといまいちな物が多いですね。
http://www.80plus.org/manu/psu/psu_reports/ANTEC-CP-850-Report.pdf
http://www.jonnyguru.com/modules.php?name=NDReviews&op=Story&reid=142

番外編

ニプロン LGA775対応 350/505W ePCSA-500P-X2S ePCSA-500P-X2S
  • 価格: ¥ 32,334

電源ファンを交換する前提であれば,NIPRONのePCSA-500P-X2S(-MN)はかなりいけている電源だと思います。650Wのほうは VCCI ClassBとれてないので個人的にはやめた方がいいと思いますが,500Wのタイプは非常に良いです。ただし,500Wはピーク値で,連続運転は 350Wまでなので,VGAがかなりの電気食いとなっている現在となっては,一般的にはとても使いづらい電源になってしまったといえるでしょう。でも, オーディオPC用途としては全く問題ありません。
リップルは3.3Vと5Vが極めて優秀,驚異の5mV付近です。12Vも20mVくらいなので非常に優れているといって良いでしょう。さしあたっての問題 はファンの騒音だけではないでしょうか。NIPRONは電源ファンが交換できるので,低騒音ファンに変更することも容易です。とことん拘りたい方はどう ぞ。

ATX電源の改造手法

※ 改造するとメーカーの保証を受けられなくなるばかりでなく,故障や発火の原因となることがありますので,くれぐれも自己責任で!

パスコンをつける

電源周りにフィルムコンや積セラコンを並列に取り付けて力率改善やノイズ吸収を狙う方法は古典的ではありますが,PCオーディオの世界でも割とメジャーな方法といえるかもしれません。 AC用でもDC用でも可能です(耐圧にご注意を)。フィルムコンはACもDCも兼用できますが,積セラコンはDCで使われることが多いですね。

電磁波吸収体をつける

オヤイデやジャパンバリューで取り扱いのある電磁波吸収シートを貼る,もしくは,Stillpoints製ERSを貼る,といった方法もよく見られます。ただ,これらは磁性体をシート上に加工した物なので,そのあたりは理解して購入して下さい。

FUSEを入れ替える

付属のFUSEでは心許ないという場合にはオーディオ用のFUSEにするという方法もあります。取り付けるのが難しいケースもあるので,電源を開けて(開けた時点で保証が無効になるのでご注意を!)よくよく確認してみましょう。

筐体を改造する

ほとんどが当たり前のように鉄ケースなので,どうしてもアルミケース入り電源が欲しいと言う方はグロウアップ・ジャパンの電源かTORICAの電源を中古で探し ましょう(ただしグロウアップの電源は電磁波規制のテストを受けていません)。ATX規格が共通規格だからこそ出来る荒技です。
とはいえ,電源ケースそのものの電磁波的な対策としては鉄製のほうが良いので,アルミ 至上主義というのも考え物です。鉄ケースに比べてアルミケースは電磁波の遮蔽率がかなり悪いので(ほとんどスルー),入れ替えをする際には電磁波吸収素材を併用しないのはお勧めしません。むしろM/B等に与えるノイズの影響が増えてしまうことが考えられます。

議論状況

電源でオーディオ機器の音が変化するのは経験上明らかであり,程度の差こそあれ,この点に疑問を持つ方はほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。PC用ATX電源についても,もちろん音が変化するということまでは衆目の一致するところです。
問題は高音質な電源はどれかという選択の問題ですが,この点については明確でなく,合理的な根拠を持って特定の電源を推奨する見解はありません。

参考

○The Audio PC / HDD Transport Project2 内部構造をお見せします
http://www.ad.il24.net/~maywind/WHYHUSH.html