OSカスタマイズの基本

全体のバランスを見て調整する

再生ソフトはプロセス優先度を上げ,その他のプロセスは優先度を下げる

実のところ,私のプロセスチューニングはシンプルな法則に従っています。たったひとつ,これだけです。
もちろん,何が再生に関係し何が関係しないのかは,環境に応じて異なるので注意が必要です。
しかし,それより(個人的に)重大な問題は,これを達成するにあたってお膳立てがものすごく必要だということです。換言すれば,プロセスチューニングは PCオーディオにおいて本来最後にやるべき項目であり,本当に他にやることが無くなった方の最後の遊び場(笑)ということになります。

プロセスチューニングのための環境構築

まず,以下のことを意識する必要があるとおもいます。
(1)OS環境が整わないとプロセスチューニングは進まない
(2)ハード環境が整わないとプロセスチューニングは進まない
(3)プロセスチューニングでの変化を見越してハード環境を整える

(1)OS環境が整わないとプロセスチューニングは進まない

プロセスチューニングといっても,普段何の気無しに使っているPCの場合,プロセス数は相当多いはずです。例えば,私が普段使っているマシンのプロセス数をタスクマネージャで確認すると,この記事を書いている時点で62個のプロセスが動いていました。
実際問題として,60を超える数のプロセスの優先度を全て管理するのは難しいと言わざるを得ません。対処法はただ一つ,専用のOS環境を用意する,これに 尽きます。不要なソフトはインストールしない,不要なサービスはインストールしない,これが重要です(むしろこちらのほうが根本的対処法)。
それだけでどういう訳か音は良くなります。まぁ,CPUとメモリが楽できるので,その分不要な電流消費が減り,電源への負荷が減り,グラウンドが安定し,結果オーディオインターフェースのデジタル出力が安定する,と仮説は成り立ちそうです。

ちなみに,拙宅のPCトラポは,音楽再生時でもプロセス数が15以下となっています。これ以上削るとOSのログにエラーが記録されてしまうので,さすがに限界に来ている気はしますが…。
改めて申し上げますが,肝心なことは,プロセス優先度を変更して音質改善を狙う前に,OSそのものの軽量化を進める必要があるということです。

(2)ハード環境が整わないとプロセスチューニングは進まない

さて,(1)を達成したとしても,次の難関が待ちかまえています。
拙宅でも何人かの方に聴いていただきましたが,聴感上はソフトだけ対策すればよいというわけにはなかなかいかないようです(私も同感です)。
例えば,PCトラポとしてある程度ハード的な改造(例えば,電源部改造,M/B改造,筐体改造,オーディオインターフェース内蔵等)が進んでいるものについては,プロセスチューニングをギリギリまで詰めている方が好評でした。
しかし,汎用性重視の普通のPC(例えば,普通のUSBオーディオインターフェース)で再生する場合,プロセスチューニングはあまり効果が見込めないどこ ろか,むしろ聴感上は印象が悪くなるケースが多いようにおもいます。ただし,たいていの場合はプロセス数自体が多い環境での話なので(1)とも密接に結び つくでしょうね。

確かに,聴いていてどうも音楽に没頭できないということでは実用上問題があるわけで,現実的には折り合いをつけざるを得ないこともあると思います。
ただ,OSやプロセスのチューニングばかり進めてハードウェアの再検討を後回しにしていくと,結局(聴感上)うまくいかない…なんてことが経験上は多かっ たですね。OSの挙動的にはこのほうが良いはずなのにうまくいかない,そんなときにはハードに視点を移してみると,違った知見が得られるかもしれません。

まとめますと,ロジカルなプロセスチューニングがどうもうまくいかない場合には,ハードウェア的な視点に切り替えてみると先に進めることが多い,ということです。

(3)プロセスチューニングでの変化を見越してハード環境を整える

(2)との関連で循環論法ぽい話になりますが,ご容赦を。
プロセスチューニングをある程度こなしていくと,おおよそどこをどのようにいじるとどうなるのか,が見えてきます。PCの改造も,最終的には聴感上のバランスをとって,各人の好みに仕上げていくわけですが,問題は,それをどのように行うかです。

私の場合は,以下のような方針に則ってハードの改造を薦めます。

  • 理論的に性能向上が明らかな部分は先に手をつける(内部配線のツイスト等)
  • 経験上,音質向上がかなりの程度見込める部分にも手をつける(電源対策等)
  • 微妙な音質のコントロールを兼ねたパーツ選定は,ソフトウェアのチューニングが終わってから行う(パーツの銘柄選び等)

個々のパーツを追加・変更した場合の変化については,聴感に従う限り,その時点でのその環境での評価でしかないわけですから,ソフトウェア的に チューニングが進んでいない状況でパーツの選定に躍起になっても,あとから全然違う音質傾向になって愕然…なんて笑えない話もあるかもしれません。
このあたりの話は,自作アンプなどで音決めをする話と似ているところがありますね。パーツ単体の音を何となく経験上知っていて,その組み合わせで当初バラ ンスを取るわけですが,あるパーツを性能の良い(グレードの高い)ものに変えてみたら音質傾向が変わりすぎて涙目,みたいなことです(苦笑)。

ですので,PCオーディオ単体で音質的なバランシングにそこまで拘る必要はないと思っています。私の場合,むしろ,変化するパラメータが多すぎる からこそなるべく悩みを減らしつつ,あとは悩ましい部分(明確に判断不可能な部分)を変えていく,というほうが精神衛生上良いです。

私個人としては,OS・ソフトウェアが音楽再生にとって客観的に理想状態にあるのであれば,その時点で聴感上得られる印象を変えるには ハードウェアを変更するほうが解決方法としては結果的に良い方向にいったことが多かったですね。場合によっては,オーディオシステムの下流も見直すと飛躍 的に進化を遂げるかもしれませんし^^;
もちろん,現実にはOSの全ての挙動を把握することは困難なので,理想状態に落とし込むということ自体無謀といえば無謀なのですが…。
しかし,私個人の考えとしては,オーディオ趣味は気長にやるものですし(エージングなんて概念がありますしね),多少変な音でもソフトウェア的に整理でき る部分は整理しておきたいので,状況に応じて種々のプロセスの優先度を変更するといったことはしないようにしています。実際プロセス優先度で音質の調整は 可能ですし,そのノウハウもありますが,あんまり本質的な対策ではないので…。
なので,その時々でソフトウェアチューニングの理想型を求めつつ,適宜ハードを調整する方式にしているわけです。PCオーディオはノートPC方式も盛んですが,私がデスクトップの筐体に拘っているのはこのあたりの考え方の違いも反映されているからですね。

進むのも戻るのも冷静に

PC対策の過程で,場合によっては世間一般に言われていることと違う印象を持つこともあるかもしれません。「このパーツ評判いいのにうちではいまいちだな?」なんてパターンですね。
しかし,それはそれでよいと思います。プライベートな趣味なのですから,うちではそのほうがよかった,と割り切ることも時には必要だと思います。あとはそれが思いこみや勘違いでないかを疑っていく姿勢さえ忘れなければ,大筋で踏み外すことはないかなと。
私も今回プロセスについて色々と書いておりますが,もしかしたら明日には「間違ってました!」と考えを改めているかもしれません。

若干話がそれますが,確かにWindowsOSは中核となる部分はブラックボックス化されていて,その限りではLinuxその他これに類するOSのように全てオープンになることは望むべくもないわけです。
しかし,実際の使い勝手と合わせて,適切にソフト・ハードをチューニングすれば十分カスタマイズ可能なわけで,チューニング次第で音質的にもハイエンド機に対抗できると思っています。
また,オーディオ機器やアクセサリーの組み合わせ方とは異なり,ソフトのチューニングはある程度論理必然的な解法があるわけで,それに従っていった結果聴 感上の印象が悪いのであれば,他の原因を探るほうが長期的な意味では伸びしろのあるシステムとなるのではないか,と理解しています。
これはあくまでPCの世界だからある程度割り切れる話で,オーディオ機器は感性とのバランスがとても重要なので,必ずしも測定結果上良好だから心地良い音だ,というわけにはいかないことは,皆さんよくご存じではないかとおもいます。

さて,話を戻します。ある意味,PCオーディオのソフトウェア的設定での音質傾向調整はいつでもできるわけで,私としては今のところギリギリまで詰めた状態でどうなるのか,その状態で何をすべきかに主たる関心があります。
もちろんこれは私の考えですから,正しいとは断言できませんし,今回の一連のエントリも,こうすべきだ,こうあらねばならない,ということを申し上げているわけでは決してありません。あくまで参考ということで。
まぁ,好きな音楽はどんな音でも好きですし,あとは脳がしっかり音楽に入っていける最低限の性能があれば音楽鑑賞に何ら支障はないとおもいますね。
それに,話の前提をひっくり返すようですが,そもそもPCじゃなきゃ駄目だというわけではありません。最終的に凝りに凝って駄目なら普通のトランスポート に戻っていくという選択も良いと思います。PCはまさに目的達成のための手段であり,道具なのですから,しっくり来ないならしがみつく必要もないのです。

そうはいっても,多様性こそがPCの面白いところであり,それ故に完結したオーディオ機器に比べると自由度は遙かに高いといえます。自由な発想,自由な意見交換,そこから生まれる多様性に本当の価値があるわけですね。
その多様な選択肢には,オーディオ用PCを捨てる,というものも含まれていることを意識することが出来れば,ある程度突き放して冷静にPCオーディオを見つめることが出来るのではないかとおもいます。