ネットワークオーディオの仕組み
ネットワークオーディオにおいては,どんなに工夫しても最低2つの機器が必要です。技術的な詳細についてはあまり細かいことを説明しても音質改善のヒントにつながってきませんので省略しますが,ネットワークオーディオを楽しむ上で必要な機器はほとんどこの3つの機能のうちどれか最低1つの機能を有しています。
機器によっては複数の機能を同時に持っているようにみえるものもありますが,基本的にはこの3パターン(とその組み合わせ)ですから,新製品がでた際にもこれらのうちどのジャンルの製品なのかを確認すると思考が整理されるでしょう。
UPnPの場合,基本的には(1)メディアコントローラーを使って,(2)メディアサーバーにあるデータを,(3)メディアレンダラーで再生する,という流れです。DLNA準拠の機器を使う場合,これらに加えてデジタルメディアプレーヤーという機器を使って(1)と(3)を単一の機器で行う方法もあります。
名前が沢山出てきて混乱しますが,「ネットワークオーディオ」はジャンル名,「ネットワークオーディオプレーヤー」はオーディオ機器の総称,「メディアレンダラー」はUPnPで定義されている機能名,「デジタルメディアプレーヤー(DMP)」はDLNAで定義されている機能名,と覚えておきましょう。
メディアサーバー(DLNAにおいてはDMS:Digital Media Server)
メディアファイル(音楽や映像などのコンテンツを記録したデータ)を保存・管理するための仕組み(デバイスクラスといいます)です。ネットワークオーディオにおいてはリッピングしたファイルやダウンロードしたファイルなど,全てメディアサーバーに登録しなければ再生出来ません。
一般的にメディアサーバー機能はNAS(Network Attached Strage)と呼ばれる機器を使います。代表的なNASメーカーの製品にはメディアサーバー(DMS)用のサーバーソフトがインストールされています。
メディアレンダラー(DLNAにおいてはDMR:Digital Media Renderer)
メディアファイルを再生するための仕組み(デバイスクラス)です。一般的には「ネットワークオーディオプレーヤー」と書いてある場合には,メディアレンダラー(DMR)を意味します。
たとえば,LINNのDSシリーズはメディアレンダラー(DMR)として機能するので,PCもしくはスマートフォンなどでコントローラーソフトを使わなければ音楽を再生することができません。
また,メディアレンダラーはPCに専用のソフトウェアをインストールすることでも実現可能ですが,PCの場合OS標準の機能としてファイルの共有が可能なのであまり意味がありません。
メディアコントローラー(DLNAにおいてはDMC:Digital Media Controller)
メディアサーバーとメディアレンダラーをリモートコントロールすることができる仕組み(デバイスクラス)です。一般的にはPCやスマートフォン等にインストールするソ フトがその役割を担います。メディアサーバー上にあるファイルを選択し,メディアレンダラーに再生等の指示をすることができます。
注意しなければならないのは,音楽再生中にメディアコントローラー(DMC)を経由してデータが送られるわけではないということです。発想としては完全にリモコンと一緒で,音楽再生中はDMSからDMRにデータが送られますので,DMCは無線LAN対応の機器を使うのが使い勝手の点で望ましいでしょう。
DLNAにおけるDMP:Digital Media Player
DMRとDPCの機能を単体で有する機能(デバイスクラス)をDMPと呼びます。つまり,「DMR+DMC=DMP」となります。ネットワークオーディオプレーヤーの付属リモコンで操作したい方は,「DMPとして操作可能」と記載がある製品を購入しましょう。メディアサーバー(DMS)とDMPがあれば,ネットワークオーディオを最小の構成で楽しむことが出来ます。
もっとも,DMP付属のリモコン等でDMPを操作するのは非常に難しいと思われます。その理由は,本体の表示部がとても小さいうえ,ファイルを選択する際にディレクトリを何度も移動しなければならず,ファイルの一覧性に乏しいからです。DMP機能を有するネットワークオーディオプレーヤーをDMRとして動作させることもできますから,別途DMCを使って操作するほうが利便性が高いと思います。
操作の手順(代表例)
(1)リッピング:CDをリッピングしてWAVまたはAIFFにする
バイナリ一致(ビットパーフェクト)環境の構築が最優先です。Windows環境でしたらEAC,MacOS環境でしたらX Lossless DecoderまたはMAXを使うと良いでしょう。後述するMediaMonkeyでもリッピングは可能ですが,バイナリ一致のための手当はあまりなされていません。
FLACを使いたい場合は,EACを使うのでしたらFLACプラグインをいれてリッピング時にFLACのタグに情報を埋め込むこともできます。X Lossless Decoderの場合,特に機能を追加するまでもなくFLACにエンコードすることができます。
(2)変換:必要であればWAVまたはAIFFを他のファイル形式に変換する
WAVはタグが使えない関係上,実際はFLACまたはAIFFを使うことになるでしょう。FLACのエンコードはWAVまたはAIFFへのリッピングの後からでも可能ですが,CDDB(音楽情報のデータベース)を使ってタグを入力する場合,できるだけリッピング時にやってしまった方が良いのは確かです。EACまたはX Lossless Decoderを使ってエンコードまで終わらせるのが良いでしょう。
(3)編集:ファイルにタグを付ける
タグの編集ソフトとしてはMediaMonkeyが最も柔軟な操作が可能でしょう。MediaMonkeyにも簡易的ではありますがリッピング機能とFLACエンコード機能がついています。
MediaMonkeyの機能の詳細やインストール方法について
○MediaMonkey Wiki
http://mediamonkey.うぃき.jp/index.php?FrontPage
○LINN JAPAN |DS Soft・Manual [PDF]
http://www.linn.jp/products/new/pdf/MediaMonkeyManual.pdf
(4)登録と管理:NASにファイルを転送してファイルを認識させる
基本的にはNASのデータ保存領域に作成したAIFFやFLACをコピーするなどして保存すれば問題ありません。
NASに保存してあればPCに保存されている元のファイルは削除してしまっても構いません。ただし,NASが破損したときのためにバックアップは取っておいて方が良いでしょう。
(5)再生:DMP付属のリモコンでDMPを操作する,またはDMCでDMRを操作する
DMP付属のリモコンで操作することも可能でしょうが,実際はDMCで操作するほうが便利ではないかと思います。特にiPhoneやiPod Touch,iPad用のアプリは開発も盛んで使い勝手の良いアプリが複数ありますので(大半は有償),評判の良いものを選ぶと良いでしょう。有名なものとしてはPlugPlayerやSongBook DSがあります。
ネットワークオーディオのメリット・デメリット
ネットワークオーディオ方式の利点と欠点をまとめてみましょう。
メリット
- PCが直接プレーヤーになるわけではないので,PCにあれこれ音質改善のための対策を施す必要がない
- ジッター対策はネットワークオーディオプレーヤーに対して行えばよく,通常のPCトランスポート+DACという構成から比べると明らかにジッター対策を施しやすい
- 部屋にPCを置いておく必要がないのでオーディオシステムにスマートに組み込むことができ,PCの静音化対策なども不要である
- 可動部品がないため,DAC並の長寿命が期待できる
- スマートフォン等をコントローラーとして利用することができるので,利便性はコントローラーソフト次第でいかようにも向上する
デメリット
- プレーヤーを買うだけでなく周辺機器も必要
- リッピングとデータベース管理ソフトへの登録という作業をするまでは全く音が出せない
- ファイルにタグを埋め込む形で管理するのが推奨される仕様であるため,PCがファイルをただ選べば直感的に操作できるのと比べると,ファイルの管理のための手間がかかる
- リッピング→ファイル管理→DB登録までを一括して行ってくれるソフトウェアが存在しないため,個々のソフトウェア毎に知識と操作のためのスキルが必要
- LANを使ったネットワークを個人で構築・管理するスキルが必要(ショップが保守・管理してくれることはない)
- オーディオの世界に比べて規格が変更になるスピードが速いため,新たなサービスに対応出来ないプレーヤーは陳腐化しやすい
- 本体で操作することがあまり念頭に置かれていないので,特に多数のファイルやディレクトリ(フォルダ)を行き来する場合には本体での操作が難しい

