PCトランスポートの基本を知ろう

この項では,PCトランスポートについて勉強していきましょう。CDプレーヤーとの比較という観点で解説してみたいとおもいます。

CDプレーヤー基礎知識

CDは生の音を圧縮して作っている

まずはCDについて考えてみましょう。CDに記録されている信号はデジタル方式と呼ばれる信号です。これに対して,私たちが普段耳にする音は全てアナログ信号に分類されます。
デジタル方式の信号は,膨大な情報量のアナログ信号をうまく削って電気的な信号として記録されていて,人間がその信号をそのまま聴いても元の音とは全く異 なる雑音(FMラジオのノイズのような「ザー」という音)として聞こえます。CDプレーヤーにせよ携帯音楽プレーヤーにせよ,デジタル方式の信号を再生す る全ての機器は,デジタル信号をアナログ信号に変換してくれる機能を持っています。この機能によって,私たちは元の音に近い音を楽しむことができるので す。


MPEGオーディオ(http://qtake.hp.infoseek.co.jp/3-8.html Qtake 2007)

CDプレーヤー = トランスポート + D/Aコンバーター

CDプレーヤーときいて何かをイメージ出来ない方はあまりいらっしゃらないと思いますが,トランスポートやD/Aコンバーターという名前はきいたこ とがない方もいらっしゃるとおもいます。皆さんご存じのCDプレーヤーの機能を大きく二つに分けると,トランスポート(Transporter)部と D/Aコンバーター(Digital to Analog Converter)部にわけることができます。
トランスポート部は,CDに記録されているCD-DAという方式のデジタル信号を読み取ってPCMという形式のデジタル信号に変換し,これをD/Aコン バーターに伝達する機能を持ちます。これに対して,D/Aコンバーター部とはPCM形式のデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する機能を持ちます。

音の良さを追求したオーディオ機器になると,CDプレーヤーの二つの機能を独立させて,「CDトランスポート」と「D/Aコンバーター」という名前 で,専用の機械としてそれぞれ製造・販売されています。一般的には,異なるメーカーのCDトランスポートとD/Aコンバーターを選んでも正しくデータが送 られ,アナログ信号に変換されます。
日本では,トランスポートを略して「トラポ」,D/Aコンバーターを略して「DAC」(読み方はダックが多いかな?)と呼ぶことがあります。

携帯オーディオプレーヤー = トランスポート + D/Aコンバーター + アンプ

iPodやWalkmanなど直接イヤホンをさして音楽鑑賞ができるものは,上記のプレーヤー機能にアンプ機能が加わったものです。

PCトランスポート基礎知識

PCトランスポートとは,PCにトランスポートの役割をさせるもの

「オーディオPC」と拙Blogで記載されているものは,PCにオーディオプレーヤーの役割をさせるものです。すなわち,アナログ方式の音声信号を 出し,アンプとスピーカー等につなげて音楽鑑賞をするものになります。これに対して,「PCトランスポート」と拙Blogで記載されているものは,PCに オーディオプレーヤーの役割をさせるものです。すなわち,PCからデジタル方式の信号をD/Aコンバーターと呼ばれる機器に送るものになります。
従来は,オーディオインターフェースと呼ばれる製品を使う必要がありましたが,最近ではデジタル出力をPCのマザーボードから直接取り出す方法もあります。

なお,USBオーディオも,PCからデジタル信号を受け取ってアナログに変換していますので,USB-DACと呼ばれることもあります。この場合も,PCはトランスポートとして機能することになります。

トランスポートとD/Aコンバーターの理解でポイントになるところ

トランスポートで大切なのはバイナリ一致と低ジッター

トランスポートで最も大切なことは,デジタルのデータを最初から最後まで改変しないでDAコンバーターに届けることです。PCをトランスポートとし て使う場合には,データを改変しない特定の環境を構築していく必要があります。Windowsの場合には特定のソフトと機器が要求される「ASIO」もし くは「WASAPI排他モード」という仕組みを使い,Macの場合には標準環境である「CoreAudio」という仕組みを使うことになります。今はじめ て知ったという方は,そういうものがあるんだ,位の理解で良いでしょう。
その上で,送るデジタル信号の送信タイミングが綺麗にそろっているとさらに良いと言われています。この綺麗にそろった状態を「低ジッター」といいます。

D/Aコンバーターで大切なのはDACチップまわりのパーツと低ジッター

D/Aコンバーターは非常に繊細な設計が必要とされており,スペック表でわかる性能の差以上に聴感上の差が激しい製品群です。D/Aコンバーターの性能の上限を決めるのがDACチップと呼ばれる心臓部です。ですから,まずはDACチップの性能を確認してみましょう。
DACチップが対応していないデジタル信号は変換することができないので,特にインターネット上の動画コンテンツを高音質で楽しみたいという方は,対応する「サンプリング周波数」の表記の種類が多いほうが良いでしょう。
さらに,D/Aコンバーターでも,DACチップがデジタル信号をアナログ信号に変換する際にデジタル信号のタイミングが綺麗にそろっていることが重要とされます。したがって,D/Aコンバーターにおいても,「低ジッター」であることは重要といわれています。

音声用デジタル信号とデータ通信用デジタル信号は違う

トランスポートとD/Aコンバーターとを繋げてデジタル音声信号を送る規格は,S/PDIFとAES/EBUの2種類が一般的です。これに対して,USBやLANなどは,同じデジタル信号を扱いはしますが,信号の内容と取り扱いが全く異なる点に注意が必要です。
デジタル音声信号を送る規格の場合は,デジタルデータをアナログに変換する際に必要となるクロック(信号送受信のタイミング)信号も音声用信号と混ぜて送信していて,両方必要不可欠な要素です。これに対して,USBやLAN等のデータ通信用規格は,データそのものをパケットというデータのまとまりとして順番に送信するだけで,クロック信号はほとんど意味を持ちません。

このクロック信号の品質が悪い(=高ジッター)と,アナログ信号に変換する際に本来元の信号にはなかったはずのノイズが含まれてしまい,音質が低下します。一般的には,データそのものの品質が問題になる例は少ないといっていいでしょう。