デジタルの世界とアナログの世界を比べてみよう

まず,さしあたってデジタルの世界(デジタル領域)とアナログの世界(アナログ領域)を完全にわけて考えるところからスタートしましょう。

デジタルとアナログの意味をみてみよう

デジタルとは

デジタルとは「アナログに対応する理論で、工業的には状態を示す量を数値化して処理(取得、蓄積、加工、伝送など)を行う方式のこと」(デジタル – Wikipedia より引用)

デジタルデータの代表的な特徴を挙げてみますと,

  • 連続した物理量ではなく,間の離れた数値(これを離散値といいます)を使って表現するため,アナログデータに比べて劣化しにくい
  • 反面,連続する物理量を離散値に置き換える際に(これを量子化といいます),誤差が生じてしまう
  • 表現する値は一義的に定まる(誰が解釈しても同じになることが保証される)
  • 伝送,記録,再生する場合に,ノイズが混入したとしても,一定程度ノイズによる影響を無効化することが可能
  • 誤り訂正符号をデータに折り込んでおくと伝送の過程でデータが破損してもある程度修復する仕組みを用意することが可能

という点にあります。

アナログとは

アナログとは「類似・相似を意味する。連続した量(たとえば時間)を他の連続した量(たとえば角度)で表示すること。…時計や温度計などがその例である。エレクトロニクスの場合、情報を電圧・電流などの物理量で表わす」(アナログ – Wikipedia より引用)

アナログデータの代表的な特徴を挙げてみますと,

  • 情報を物理量で表すため,精度の限界がノイズなどの物理的な限界によって決まる
  • 大きな差異は直感的・感覚的に判断が容易であるが,細かい差異は判断が非常に難しい(誰が解釈しても同じになる保証がない)
  • 伝送,記録,再生する場合にノイズが混入すると,これを取り除くのが困難
  • 一度データに誤差が発生すると,元のデータに復元することが出来ない

という点にあります。

PCトランスポートはデジタル領域の機器

PCオーディオ(特にPCトランスポート)はデジタル領域の範疇の話がほとんどで,特にPCトランスポートは完全にデジタル領域にある機器ということができます。CDトランスポートも同様ですね。
これに対して,CDプレーヤーやDACはデジタル領域とアナログ領域を跨いだ機器ということができますし,アンプやスピーカーは完全にアナログ領域にある機器ということができます。
そこで,まずはデジタル領域とアナログ領域の違いを見てみることにしましょう。

アナログ領域とデジタル領域の違い

アナログ領域におけるデータの同一性

アナログ領域では,一般に交流信号を電流と電圧の連続した強弱を利用して伝えていますが,究極的には入力と出力が完全に同一であることを確かめる方法はありません。もちろん,オシロスコープや各種の測定器を使えば,限りなく近い,ということまでは判断が可能です。しかし,それは限りなく近い(≒)のであって,イコール(=)ではないのです。

デジタル領域におけるデータの同一性

これに対して,デジタル領域では閾値(しきい値=スレッショルド)というものがあり,全てこの閾値を信号(の電圧)が超えるか超えないかで信号を判断します。デジタルの世界は0と1で出来ているという話がありますが,現実的にはこの閾値を超えるか超えないかということで離散値がいくつであるかを判定しているわけです。

アナログ領域は定性的判断,デジタル領域は定量的判断になじみやすい

アナログ領域と定性的判断

このような両者の性質ゆえ,アナログ領域は定量的判断がデジタル領域に比べて困難であるとされます。その中でも,特に音質評価についてはリスナーの主観的な判断を回避することが不可能なので,全て定性的判断となります。

そして,(残念ながら)我々人間はアナログ領域に生きており,オーディオシステムはユニットが空気を振動させることで音波を伝えている以上,我々は最終的にアナログ領域で音を捉えていることになります。
従って,音質評価については客観的判断というのは存在せず,複数の主観の集合体である間主観的判断(一般的判断)という似ているようで異なる概念が存在することになります。

※ ここで言う「定量的判断」とは,対象をある基準に則って測定することで,量の大小(数値)で白黒がはっきりつき,同様の実験を誰でも行うことができる手法を意味します。
※ ここで言う「定性的判断」とは,物事の性質についての評価を元に,これを分析する手法で,統計的データに基づいて数値化を試みることはできるが,白黒がはっきりつくわけではないものを意味します。

デジタル領域と定量的判断

これに対して,デジタル領域では閾値で判定できる程度にシグナルが強ければ,非常に安定してデータを得ることが出来ます。デジタルの強みは,信号の入力と出力が同一であることを確認し,これを保証する仕組みがある,ということに尽きるでしょう。
これは同一のデータを大量に生産するという目的には非常に大きなメリットとなり,故に定量的な判断になじみます。そして,一般的にデジタルドメインでデータの同一性を判定する基準となるのが「バイナリ」という値なのです。