デジタルオーディオにおけるエラー訂正とデータ補間

最近PCオーディオを推進するメーカーの売り文句として非常に不思議な言い回しが増えてきているそうなので,改めて考えてみたいと思います。

エラー訂正

「既存のCDプレーヤーはリアルタイム読み込みなので,エラー訂正が入ってしまって音が悪くなりますが,弊社のPCトランスポートはリッピング方式ですので再生時のエラー訂正が不要なため音がよいのです。」

エラー訂正が必要なエラーには,深刻度に応じて段階がありC1,C2,CUがあります。C1は軽微なランダムエラーで,細かく小さい傷に対応しま す。C2エラーはやや重大なエラーで,長めの傷に対応します。CUエラーはもはや訂正不能な深刻なエラーで,補間処理を行います。補間処理が不可能な程の 傷の場合は,音が飛ぶことになります。
なお,日本のCDプレス技術は非常に高度で,特に大手プレス会社のCDの場合,品質としては世界でもトップクラスだそうです。
まぁ,傷物CDでしたら普通にC1エラーは顕著ですが,エラーのほとんどは数学的処理で元のデータを復元することが可能です。また,エラー訂正は特定の部分でのみ発生するものですから,エラー訂正そのものがCDの再生音全体に作用するわけではありません。

個人的には,CDPはエラー訂正が必要なので音が悪いという説明をしてしまうブランドはかなり怪しいと思います。必ず,なぜエラー訂正が入ると音が悪くなるのかの質問をしましょう。そして,下記のような回答をする場合は,避けて通るのが無難でしょう。

【市販CDPは本当にバイナリ不一致になるのか?】

PCオーディオの優位性をPCオーディオブランドが語るときには,既存のピュアオーディオ向けCDPよりも読み取り能力が高いといった言い回しを することがよくありますが,本当でしょうか?本当に既存のCDPはバイナリが不一致になるようなプアなドライブを使っているのでしょうか。
こうした主張を繰り返すブランドが実際にデータを掲げている例は見たことがありません。かといって,複数台を用意してチェックするのも個人では難しい…。

ところが,なんとjuubeeさんが見事にテストしてくださいました。これは素晴らしい!

http://juubee.org/BJ/sokutei15_spdif2wav/sokutei.html

PC分野にあまり明るくない方に若干の補足説明を加えます。

▼「正常CDTrack3バイナリ相違数」
これは,傷の(ほとんど)ない正常な管理状態のCDを読み込ませてデジタルデータを出力した際に,データがどの程度PlextorのPremiumというPC用CDRドライブでリッピングしたデータと異なっているのかを示すものです。
PlextorのPremium(2)は現状市販されているドライブのなかでは最も読み取り性能が高いとされているドライブです。厳密には,正確にCDに 記録されているデータを知ることができるのは製造者のみですが,我々ユーザー側でも,複数のドライブでリッピングを行い最も多数のドライブが示した値≒正 確な値,として試験を行うことができます。

結果,正常CDであれば全てのCDP,PC用ドライブが同じ値を示しました。つまり,通常の管理状態にあるCDを使う場合,データの読み取り性能はCDPであろうとPC用ドライブであろうと違いはない(であろう)ということになります。

▼「CD6Track3バイナリ相違数」
レンタルCDショップでレンタル落ち処分とされた傷だらけのCDを読み込ませた場合に,同じ内容の正常CDから読み取ったデータと比べてどの程度読み取ることが出来たかを比べたものです。

結果,PlextorPC用ドライブはさすがに高い読み取り能力ですが,意外と韓国製ドライブが優秀な結果です。
これに対して,CDPのほうはドライブに異常がある個体のかどうなのか,極端に怪しいものを除けば,非常に読み取り能力が高いといってよいでしょう。少な くともESOTERICはPlextor製PC用ドライブより良いですね。総じてCDPのほうがPC用ドライブより高精度な読み取り能力がある(であろう)ということになります。
注意しなければならないのは,CDPは1度読み込んだだけのデータであるのに対して,PCはエラー箇所があれば何度も読み込んでようやく出した値であるということです。

つまり,正常なCDであればCDPとPC用ドライブにデータ上の差異はなく,極端に傷が多いCDの場合はよほど執念深くリッピングしない限りデータ読み取りの正確さはCDPのほうが上である,ということになります。
さすが日本の技術者の執念!PC用ドライブなんかにはまだまだ負けませんね。

補間

「既存のCDプレーヤーはリアルタイム読み込みなので,エラーの際データの補間が入ってしまって音が悪くなりますが,弊社のPCトランスポートは何度もリッピングしなおしてエラーをなくしますので優れています。」

補間の有無というのは,聴感上の善し悪しではなく,正しい正しく無いの次元の問題です。
補間が必要なエラーをCUエラーといいますが,CUエラー入りのCDというのは滅多にお目にかかりません。リッピングにおいても,CUエラーが出るようなケースでは,完全に正しい信号を読み取れるという保証はありません。多数回試行して,最も同じ結果になった回数の多い数値とする,という程度のものです。

色々端折って簡単にいってしまえば,「エラー訂正がある→音が正しく無くなる→音が悪くなる」のではなくて,「エラー訂正がある(程盤質が悪い)→サーボ等が頻繁に動作する→音が悪くなる」です。
繰り返しますが,訂正可能なエラーそのものは,音が悪くなる原因ではないですし,CUエラー補間そのものは音が正しく無くなるだけで,音が悪くなる原因ではありません。
CD再生品質全般が悪くなるのだとすれば,それはCD再生中等しく生じる現象でなければなりません。となると,それはCD盤質やピックアップ・サーボ類に起因するジッターによるものである,と理解しておくのが現時点ではベターではないかと思います。

▼ポイント
○CDのエラー訂正とエラー補間がごっちゃになっている人が企画したPCオーディオ製品は,必ず試聴して買いましょう。
○CDのエラー訂正そのものが音質に悪影響を及ぼすと説明する人が企画したPCオーディオ製品は,必ず試聴して買いましょう。

これらの製品は技術的な根拠に乏しく,理論的なアプローチではない可能性があります。技術的優位性の説明は聞き流して,聴感上好ましいかどうかで判断しましょう。

【ご参考】
http://juubee.org/BJ/sokutei12_cd/cd/sokutei.html
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010611/dal14.htm