ピットジッターとクロックジッターとの関係性を考える

ジッターに関する論文をみてみる

ジッターとひとことにいっても,色々な測定方法があるということは既に述べましたが,ジッターが測定できるものは何もクロックだけではありません。CDのピットの精度についても,ジッターという形で計測することが可能です。
そこで,ジッターにまつわる話題として,ピットジッター(CDのデータを記録する窪みの形状の精度)とクロックジッター(DACが動作する上で必要なタイミング合わせの精度)が直接関係ないという話について,少々捕捉しておくことにします。

まずCDメディアの盤質(ピットジッター)がクロックジッターに及ぼす影響ついて,一般的には,以下のような説明をすることになるでしょう。この項目は最近話題の高音質CDと対比させつつ,この説明を読み解くというものです。

「  CDプレーヤの場合、メディア要因およびデータ読み取り部においてジッターが生じやすいと通説的には唱えられている。そして、インターネット上では、メ ディア上のピットを読んだ際のRF信号におけるアイパターンに含まれるジッターの様相が、メディアによって変化するデータ1も公開されている。もっとも実 際には、読み取られたデータはCIRCデコード後にバッファメモリに蓄えられ、アイパターンの読み取りを制御するクロックとは別の水晶精度のクロックを分周したサンプリング・クロックを用いてアナログ波形に変換されるため、原理的にはデータ読み取り時のジッターは、アナログ再生音に影響を与えないと考えら れる。しかし、データ読み取り時の制御回路やエラー訂正回路の働きが、それ以外のディジタル回路の動作にも電気的な影響を与え、サンプリング・クロックにジッターを生じさせるという考えもある。」
http://www.iic.tuis.ac.jp/edoc/journal/ron/r7-2-8/r7-2-8d.html
東京情報大学研究論集 Vol.7 No.2 (2004.2) pp.79-92
『ディジタル・オーディオ機器におけるサンプリング・ジッターの諸様相とその要因』

ピットジッターはアナログ再生音に無関係?

まず,引用した文章にて述べられているように,CDのピット形状のきれいさというのは,理論上は音に影響しないというのがスタート地点です。
これは,CDのデータはそのままPCM信号になっているわけではなく,傷に強くなるようにわざわざ配列を変えてデータが記録されており(CD-DA形 式),これを復号化(CIRC)して,バッファにため込んでから,PCM信号としてクロックと一緒にDACに送られる仕組みとなっているためです。

ですから,相手を説得しようとするならば,こういうベーシックな理解をふまえて,それでも音は変わって聞こえてしまうとすれば,それはどうしてだろう?という疑問に答えなければ,説得的な主張とはいえないように思います。
もちろん,実際に音が違って聞こえると言う話をただ感想として述べるのは構わないと思いますが,もっともらしいが筋違いな理屈を述べて特定の考えに誘導するというのは誤解を生むだけなので,色々と気をつけないと…。さて,どうしましょうか。

それでもピットジッターはクロックジッターに影響する?

さて,まずはピットジッターがクロックジッターに影響しないのではないか,という主張をご紹介しました。全てを理想状態においたモデル論としてはまさしく既にご紹介した論文の通りだとおもいます。しかしながら,オーディオファンの皆様のなかには,この結論には納得いかない方も数多くいらっしゃることでしょう。

特に,拙サイトをご 覧になっている方々の中でも特にエンスーな方々にとっては,トランスポートで音が変わるのは経験上明らかであり,PCオーディオに奮闘されている方々のなかには,CDを逐次読み取るという方式の根本的な問題を回避するために始めたという方もいらっしゃるのではないかと思います。
そこで,まずは高品質素材CDのメーカーが,モデル論に対してきちんと正面から説明しようとしているのかというところから見ていきましょう。

各サイトの技術解説を読んでみよう

下記は高品質素材CDを製造しているブランドの解説ページです。
○HQCD
http://www.hqcd.jp/hqcd/index.html
http://hqcd.ponycanyon.co.jp/about.html
○SHM-CD
http://shm-cd.co-site.jp/about/index.html
○Blu-spec CD
http://www.blu-speccd.jp/about.html

ディスク品質はRF/HF信号に着目すべし

まず,最近は高品質素材CDの技術系「小話」として,「うちのディスクはRF/HF信号の波形がきれいに出ます」とか「うちのディスクはRF/HF信号の信号強度(電圧)が大きいです」といった説明を多く目にするようになってきました。

※ ここで気をつけたいのは,我々がCDの音を聴くのは,CDから読み取ったアナログのRF信号をデジタル化(最終的にはPCM化)し,これをDACで再度アナログ化した後であり,つまりはアナログ領域であるという点です。
そして,D/A変換時に不正確な変換となる理由はクロックジッター以外ないわけで,仮にD/A変換時に音が変わるのだとすれば,データが不一致になっているか,クロックジッターの表れ方が変化したかのどちらかでしかない,ということをまず頭の片隅にいれておきましょう。

これらは上掲URIの解説を読めば分かりますが,大別して,信号面の反射率を上げて信号を読み取りやすくしました,ポリカーボネートの透過性をあげて信号を読み取りやすくしました,信号面のピットをきれいに作りました,という3通りのアプローチによるものです。

確かに,RF/HF信号のアイパターンがきれいであることは非常に重要です。これはRF/HF信号自体はアナログ信号であるということにも起因しているでしょう。
実際に,光ディスクのジッターカウンタを製造しているメーカーは,こうした信号のきれいさを測定するもので,ピットジッターが低いということは,反論の余地無く高品質な光ディスクを製造したということに他なりません。

なぜRF/HF信号がきれいだと忠実な再生ができるといえるの?

さて,各社のサイトの説明をじっくり読まれた方は,各社より反射させ,よりきれいな穴を開け,よりロスの少ない工夫をしていることが十分伝わった事と思います。
では,なぜアイパターンがきれいだと高音質になるのか,ご関心のある方は,改めて考えてみてはいかがでしょうか。その際には,上記の注釈と照らし合わせ て,webサイトの解説が,高品質素材CDがオーディオにおける忠実再生に寄与する理由について正面から答えているのかを検討されると思考が整理されるとおもいます。

※ 関連する話題として,SONYの金井隆さんは,CDプレーヤーはあらかじめ市販CDの反射率に合わせてチューニングが施されており,市販CDを大幅に越える反射率の特殊なCD媒体は,むしろ音質低下の原因となると唱えていらっしゃいます。

高音質CDを製造するメーカーの主張を検討しよう

音が変わるなら,D/A変換がより正確になったか,アナログ部への汚染が減ったかのどちらか

そもそも,理想的なD/A変換とは,元データと同じバイナリをもつデータを可能な限り低いジッターで変換することをいうのですから, ディスク品質とバイナリ,クロックの関係について説明しないのであれば,肝心の「不正確な変換から,より正確な変換に変わる」という部分の説明がごっそり抜け落ちていることになります。

つまり,第一に,データ変換の正確性という観点からは,「RF/HF信号がきれいで強いとD/A変換時のクロックジッターが低くなります」ということを示さないと,CDのピットジッターや反射率が正確なD/A変換に寄与することを示したことにならないわけですね。
もう少し一般化して言い換えれば,「光ディスクの品質によってクロックジッター値が左右される」ということをメーカーは定量的に示す必要があるのではないでしょうか。

そして,第二に,D/A変換後のアナログ部においては,光ディスクの品質が音を変化させる要因となっているのかが問題となります。こちらも広義の意味では正確性が増したかどうかといえますね。
とすれば,こちらのほうは,高品位素材CDが通常CDに比べてCDプレーヤーに負荷が掛からないことが明らかとなれば良いわけです。これはEMIノイズや電源の負荷がどの程度増減するのかということから判断することになるでしょう。

以上の二点は,CDプレーヤーならば両方とも問題となり,CDトランスポートならばデジタル出力時のジッター値と読み替えた上で第一点のみが問題となります。なお,HDDに一旦貯める動作をするものであれば,この問題は原理的には回避されます。

上記のものと内容同旨ですが,参考として
○#27 HDMIのAudio伝送について その1
http://blog.ratocsystems.com/pcaudio/2008/11/27hdmiaudio1-ea.html

データにもクロックにも触れない不思議な技術解説

ところが,各社発表する資料は,不思議なことに,「RF/HF信号の波形がきれいだと実際のクロック波形はこんなにきれいになります」とか「RF/HF信 号の信号強度が強いとクロック波形がこんなに強くなります」とオシロ波形を示して解説した記事は今まで雑誌やメーカーの公式発表等では一度も見たことがあ りません。
ほとんどが,「電子顕微鏡でみるとこんなにピットがきれいです」とか「HF信号のアイパターンがこんなにきれいです」とか「HF信号の信号レベルがこんなに強いです」みたいな言い回しの後に「だから高音質である」と続くわけです。

こうした説明は,論理の流れとして,「ピットジッターが少なくて反射率が高いですよ→ほらほらRF/HF信号がきれいでしょor強いでしょ→だか ら音がよいんです」というもので,デジタルデータが正確に変換出来ているかを示すクロックジッターの話が全く言及されていないということになります(もち ろんアナログ部汚染の話もないわけで)。

既に皆さんお気づきの通り,これでは高精度・高忠実度再生を理論的に裏付けたことになりませんね。仮説すらたっていない状況です。「風が吹けば桶屋が儲かる」というのと一緒です。
故に,高反射率を謳う高品質素材CDはむしろ現在のピックアップにとっては不適切だという指摘がなされても決着がつかず,一方的にボールを投げているだけになるわけです。

公式発表以上には触れないオーディオ系雑誌

百歩譲って,web上での説明ならこういった技術ネタに関心がない層にも分かりやすくアピールしなければなりませんから,ざっくりとやっても良いでしょう。
しかし,オーディオ雑誌,オーディオ技術系雑誌ですら,RF波形のパターンのきれいさとクロックジッターとの関係に言及したものがないというのは,さすがにガッカリしてしまいます。ほとんどが,前回のエントリでご紹介したメーカーの監修を受けて書かれているものであるにも関わらずです。

なぜ肝心な部分の理由を示さないのか

プレスメーカーの立場を考えてみる

以上みてきたように,どういうわけかCDをプレスするメーカーはCDが登場して20年たった今でも,何故音が変わるのかについて正面から説明することを避けています(仮説ですら)。
ただ,CD媒体が出た当初はピットジッターなんて全く言及されてこなかったのが,ここ最近になって,通常CDはピットジッターが多いんだぞ,と事実上言及するに至ったということは,ある意味進歩なのかもしれません(そのわりにサンプラーのピットジッター値が高いのは笑えない話)。

ただ,ある意味プレスメーカーの宿命というか,彼らはピットジッターそのものを計測し,その低減を目標として技術開発に取り組んできたわけで,ディスクの状態を理想状態に近づけるということは何ら悪いことではない,という立場も理解しておく必要があると思います。
すなわち,「ディスクがより理想状態に近づいているのだから,悪かろうはずがない」というのは,一つの筋といえるでしょう。ただ,この場合は,だからといって良くなるとはいえない,という留保がつくことも忘れてはいけませんね。

私個人は,こうしたピットジッター低減の努力は報われるべきだと思いますが,そうだとしても「音が良くなる」と主張する以上は,きちんと音が良くなると定量的に示そうとすることも必要であるように思います。
実際のところ,闇雲に音が良くなりますといったところで,単なる方便にしか思われない可能性もあるわけで,スタートでそうレッテルを貼られてしまった場合,イメージを回復させるのは非常に困難でしょう。結局そうなってしまえば,自ら首を絞めているのと同義です。

雑誌社の立場を考えてみる

オーディオ雑誌は発行部数が少ないので,広告費で成り立っています。広告主は誌面数に応じて広告費を支払っていますので,半分宣伝広報みたいな記事になる場合,広告主の意向が強く反映されるのでしょう

ピットジッターはCD-Rで既に語り尽くされている?

さて,ちょっと脱線しましたので本題に戻ります。ご存じの方も多いとは思いますが,同様の問題はCD-Rが登場した時に,PC業界でも問題となりました。所謂「焼き品質」の問題です。

CD-Rはピットと呼ばれる窪みの代わりに,色素を高温で加熱して物性を変化させることで,ピットと同じような効果を生じさせて,データを記録・ 再生するものですから,やはりジッター値がディスクやCDRライターの品質を定量的に判断するのに最も都合が良かったわけです。
このCD-Rの品質追求は凝り性なPCマニアの間で相当加熱し,それが今日のPCオーディオの源流の一つであるということは疑いようもないですね。

こうした状況下において,CD-RはプレスCDと比較してジッター値が大きく,この点がバイナリ的には一致するデータであるにもかかわらずCD-Rがどうも音が悪く聞こえる原因であると指摘されてきました。
しかし,既に説明したとおり,原理的にはピットジッターの値は音楽再生には影響しないわけですから,全く同じに聞こえなければおかしいはずです。さて,どう考えたらよいのでしょうか。原理的には問題ないならば…?

CDとバイナリは一緒なはずのCD-Rの音が違って聞こえるのは何故?

このようなCD-Rを取り巻く状況のなかで,アマチュアであるにも関わらずピットジッターとクロックジッターの関係について実証的に検証した方が登場します。なんと今から10年も前の1999年のことです。

音楽CDの音質とジッタの関係のナゾ(CDの神髄編)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその2(原信号特性編)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその3(ジッタ変動とスタビライザーX編)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその4(みんなでジッタサウンド編)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその5(ジッタの電源ライン波及編)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその6(緑に塗ったりカットしたり編)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその7(ジッタの影響はDACか?アンプか?)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその8(ジッタ量とエラー訂正頻度)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその9(TE信号とエラー信号記録法)
音楽CDの音質とジッタの関係のナゾその10(山本式メカニカルダンパー変造)
CD-Rのジッタとメーカーの言い分のナゾ

山本さんのご本業は医師のようですが,どういうわけかアマチュアのオーディオファンのなかで何かしらものすごいインパクトを与えることをする方というのは医師の方が多いですね。凝り性な人種ってことでしょうかw
それはさてき,本業とほとんど関係がないオーディオ分野において,当時ジッターについてここまで実証的な検証をされている記事はありませんでした。何が凄いって,基盤から各種信号を取り出して,信号の周波数成分とピットジッターの関係性をみているという点です。

上掲URIの記事は,ピットジッターと読み取りエラーの関係,ピットジッターとクロックジッターの関係,ピットジッターと電源汚染の関係について,正面から検証されており,未だに資料的価値が非常に高いものです。

他に併読することを推奨する記事として
○ジッタと駆動系
http://www.k3.dion.ne.jp/~kitt/audio/digi/index.html
○ジッタのスペクトラムおよびエラー波形
http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/media/j_spec.html
○CD-R メディア別、再生波形集
http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/media/media.html

ポイント

山本さんのご見解を簡単にまとめますと…

・CDPによってはCDの偏芯や反りの影響がアナログ出力に現れていることがオシロで観測できるものがある。
・電源のノイズの周波数分布はジッタ信号源とピークがそっくりである。

・CDは偏芯や反り,外乱に敏感で,その影響はピットジッターとして現れる。
・ピットジッターはスピンドル駆動系やサーボ系を通じて”ジッタによる回転ムラの輪廻”を生じ,それは電源ラインに大きな電流変動をもたらす。

・電流揺動による影響はアナログアンプのLine出力までの間に混変調歪みを生じさせるが,DACのクロックジッターへの影響は比較的小さい。
・原信号上のジッタの量とエラー訂正頻度との関係をみると,現信号上のジッタが相当程度多くともC1およびC2のエラー訂正はほとんどの場合成功し,他方,通常の訂正が失敗する場合は,肝心のPLLもフレーム検出もサーボ類も全滅する。

時間がない人向けの更なるまとめ

・市販CDレベルのピットジッター程度では,エラー訂正は完璧に行われるので,バイナリが不一致になることはまずない。
・ピットジッターが多いディスクは駆動系やサーボ系に負担をかけるため,これが電源ラインに電流変動を起こす。
・電流変動によって,サーボ等の動作に応じた混変調歪みがアナログ信号を汚す。また,クロックジッターへの影響も皆無ではない。

といったところでしょうか。内容の正確性を求める方は必ず原文をご参照ください。

早すぎると宣伝力が物を言う

10年前にこのような指摘が既になされていたことは驚きですし,当時としては話題が早すぎてかなりの数の方がついて行けなかったのではないかとおもいます(私も数年前に読んだときはイマイチ分かりませんでした…)。

このような早すぎる技術をアピールできずに終わるケースは日本の企業にはよく見られますね。Victorのトラポ+DACのシステムなんて90年代としては技術的にかなりの高水準であったにも関わらず,その利点はほとんど伝わらずに生産を完了してしまいました。
悲しいことに,山本さんもkittさんもオーディオにはもうほとんど興味が無くなって仕舞われているようです。そりゃ,オーディオを取り巻く環境はほとんど進歩していないのですから,当たり前かもしれませんが…。

改めて,正面から理由を示す大切さについて

これまで,CDとCD-Rとの比較に限った話であれば,プレスか色素かという見た目の違いがありますので,「音が違うかもしれない」というイメージを持ち やすく,CD-RはCDのコピー品に過ぎないので,何かしら劣るだろうというイメージも手伝って,とりあえず音はちがいそう…ということで,音が違う理由 をあやふやにしていても,なんとかイメージ戦略で売ることができました。

しかし,高品質素材CDと通常CDの比較はそうはいきません。ピットジッターや反射率が違うという状況はCD-Rとの比較と共通とはいえ,これら はどちらも「プレスCD」です。当然,一般的には「同じ音がするはずという」イメージを持たれやすく,CD-Rの場合と状況が異なっているように思われま す。

ましてや,現在はオーディオに興味が無くてもある程度自由にPCを操作できる能力があれば,データを計測することはできるわけですから,家庭でお手軽に比較できる検証で疑問を持たれてしまうレベルの説明にとどまっている状況は,害悪のほうが大きいように思います。
これは業界の売り方の下手さも手伝っているとは思いますが,実際のところ,少なくともweb上では高品質素材CDについて疑問視する見解が多いようです(特に従来オーディオに関心のない層)。これでは,誠実に光ディスクの品質を追求されている現場の方が報われません。

もちろん,山本さんもご指摘の通り,20年前の時点でのCD規格は非常に高度な技術の結晶であったように思いますし,良く練られたロジックで一定の品質を広く提供することが可能だったからこそ,全世界に普及したものだとおもいます。
かないまるさんがデジタル信号もアナログ波形で伝送されているということをおっしゃって以来,デジタルもジッターで音が変わるのだということが一部の方に は認知されてきましたが,だからといって何でも有りというのは思考停止以外の何者でもありません(この点はkittさんもご指摘になっていますね)。
変わる変わると強調しすぎることは,如何に技術的に変わらないように規格策定に携わった方々が努力されたのかということを軽視する風潮に繋がります。見方を変えれば,音が変わらない(変わりにくい)ということは,素晴らしいことです。

プレスメーカー各社は,現時点で最高の品質を届けるために,CD規格の現実的課題を指摘し(これだけで規格そのもののすばらしさを讃えることになります),これを克服する(もしくは対処する)方法を提供すると自信を持ってアピールされるべきだと思います。
そうした姿勢が,長期的には技術への信頼に繋がり,結果消費者も生産者もメリットを享受することになるのではないでしょうか。

ピットジッター対策まとめ

CDプレーヤーのピットジッター対策

一般的にはピットジッターの対策は回路的・物量的に行うしかありません。つまり,低ノイズのサーボ回路,安定度の高い電源回路をプレーヤーに内蔵させる他ありません。
しかし,読み取り性能を向上させようとするとサーボに物量をかけなければならず,結果電源へのノイズの流れ込みも多くなる可能性は高くなるといえます (サーボの量を調節できることで有名なESOTERICのP0はサーボを最小にするのが最も高音質になるということで有名でした)。

したがって,CDを回転させて随時読み取る場合には,原理的にピットジッターの影響やCDの振動,トレイの振動の影響等をゼロにすることは不可能であるということになります。

PCオーディオのピットジッター対策

まず,ピットジッターがクロックジッターの増加に多少影響し,電源にノイズ成分を載せてしまうことを前提として,PCオーディオ的にこれをどうやっ て対策するのかを考えてみましょう。PCオーディオにおいても,ドライブからデータを直接読み出すことによる方式ならば,以下のようなデメリットが考えられま す。

  • 振動によるピックアップ条件の悪化(I/Oレイテンシの問題)
    これはHDDでも同様にあり得るわけですが,CDを読み出すときのデメリットに比べたら微々たるものでしょう。
  • ピットジッター増大による電源へのノイズ混入
    オーディオインターフェースを内蔵する方式であれば,特に電源へのノイズ混入は結果的にS/PDIF出力の品質を下げかねないので問題となるでしょう。外付け方式も結局は電気的に結合されていますので,ノイズの混入は留意すべきでしょう。

こうした問題は,CDからピックアップを通じてデータを随時読み出す方式の原理的な問題点ですから,これをなるべく解決するには,HDDにデータをリッピングして格納する他ありません。結局,ピットジッターの影響を原理的に無くすには,リッピング方式を採らざるを得ないということになるでしょう。