ネットワークオーディオを使いこなす

ファイル作成編

WAVファイルを使うのは厳しい

ネットワークオーディオプレーヤーは一般に薄型であることも売りの一つとなっており,画面のサイズが小さいものが多いので,画面を見ながら探すという感じにはならないと思います。
基本的にメディアファイルのタグを使ってファイルを管理・認識しているメディアサーバー・レンダラーにとってはタグの有無は致命的となります。したがって,WAVフォーマットは無圧縮とはいえ,この点で使うのはあきらめざるを得ません。

可逆圧縮方式で選ぶなら?

可能な可逆圧縮方式のフォーマットとしてはFLACとApple Losslessが代表的ではないかと思います。

http://www.stereosound.co.jp/hivi/detail/feature_386.html

FLACやApple Losslessのメリットとしてまず挙げられるのが,楽曲にタグ情報を付与して管理出来るという点です。また可逆圧縮方式ではありますが,約半分くらいまでデータ量を圧縮することができます。

ユーザーには直接関係はないですが,音楽配信の会社からすると,ネットワーク経由で非圧縮のデータを送る場合サーバーへの負荷がかなり高くなってしまうため,半分程度でも圧縮できるほうが望ましいことから,配信音源の大半は最初からFLACでの配信になっています。また,FLACはファイルが破損しているかチェックするためのコードが含まれているので,ネットワーク経由で送受信する際のファイルの破損もチェックできるという点もFLACでの配信を後押ししているといえるでしょう。

Apple Losslessの場合,iTunesで利用可能であることもあって愛用している方が一定数いるようです(FLACはiTunesが非対応)。
もっとも,仕様が非公開となっていてレンダラーで対応させるにはおそらくAppleと契約を結び対価を支払う等のプロセスが必要ではないかと思われます。その点,FLACはオープンライセンスのソフトですから,他社の思惑に左右されずに使うことができるという点で使い勝手の良いフォーマットといえるでしょう。

可逆圧縮方式の課題

可逆圧縮の実用的な問題は,家庭内ストレージでもっぱら利用するだけならばデータ量圧縮の恩恵はあまり感じられない点もあるのですが,音質追求の観点では,デコード(解凍)時にCPUとメモリを必ず食うので,電力の消費量が変動するから,クロックが揺さぶられる可能性が高いうえ,ノイズが必ず増大する(であろう)のが精神衛生上好ましくない,ということが挙げられるでしょう。

無圧縮方式でお薦めはAIFF

もし私自身がネットワークオーディオをやるなら,AIFFでデータを管理します。AIFFはAppleの規格ですのでオープンソースではないという問題点はありますが,無圧縮でタグが付けられるという点は音質上のデメリットが生じる余地が殆ど無く,HDDの容量が許すのであれば,AIFFがお薦めです。
AIFF未対応のネットワークオーディオプレーヤーでしたら,フォルダ再生に対応しているものを使いつつWAVで運用することになるでしょう。

ネットワーク構築編

NAS

NASを必ず使うタイプのネットワークオーディオプレーヤーの場合,HDDを内蔵させないことで回転部をプレーヤーから追放し,スピンアップ等で発生する消費電力の変動やノイズといった問題を解決することができる点が音質上の最大のメリットといえるでしょう。
加えて,保守が極めて容易になります。ネットワークオーディオプレーヤーは物理的な機能の拡張性に乏しいですし,HDD故障時のサポートを考えると明らかに煩雑すぎて会社としては積極的に採用する理由に乏しいです。これは裏を返せばHDD以外の部分が故障した場合に音源の記録されたHDDごと修理に出さなければならない事態を回避することができるということでもあります。

また,PC関連分野は技術革新が速いので,規格がすぐに古くなってしまう可能性もあります。その点,LANを使いデータを通信する方式にしておけば,ファームのアップデートである程度機能的な性能は維持できる場合もあるので,長期的にみてリスクは少ないといえます。

ルータ・HUB

NASから直接データを読み出す方式の場合,NASの電源品質や回路設計の影響が,HUBやLANケーブルのGNDを媒介にしてネットワークオーディオプレーヤーに影響を与えているのではないかという指摘があります。これはLANケーブルから混入するノイズもしくはLANによるグラウンドループ が原因として考えられます。
GNDループはスイッチング電源の機器同士がメタル線でつながるとより顕著な影響がでます。ルータやHUBのスイッチング電源の品質が場合によっては再生音に影響することもあり得るので,特に電源品質という点で,ルータやHUBを検討する余地はあるでしょう。

LANケーブル等

ノイズ対策としてはGAT7等のツイストピッチの細かいものを使った方が高周波領域でのノイズ耐性が高いのですが,反面CAT7のケーブルはSTP(シールド付きツイストペア線)であるため,GNDループを生じさせやすい構造になっています。
結線を工夫するなどして,できるだけGNDループ面積を減らす必要があるでしょう。むやみに長い配線はループ面積を増加させるので望ましくありません。場合によっては光メディアコンバーターを使うのも有効です。
なお,電力線をつかったPLC通信を使うという方法もありますが,PLCは電源にノイズを流しているのと同義なので,私としては推奨いたしません。最後の手段としてご検討下さい。

音楽配信編

音楽配信とWordsync

多くのネットワークオーディオプレーヤーには外部クロック入力がありません。この点を凄く残念に思われている方もいらっしゃると思いますが,私はむしろ製品のコンセプ トが非常に合理的だと思います。その背景には,音楽配信事業との連携が視野にあると考えられます。

た とえば,音楽配信の場合,各社によってサンプリング周波数が異なることがよくあります。大別すると,48kHz,88.2kHz,96kHzが あります。もちろん高品位なインターナルクロック回路を使う方がジッター的観点で有利になるということもありますが,実際上の問題として,音楽配信の様々 なサンプリング周波数のデータに対応するためには,インターナルクロックを自動で切り替えるのが望ましいのです。

というのも,PC トランスポート(DAW)系システムの場合,出力するサンプリング周波数はどうしてもソフトウェア側で設定し直さなければなりま せん。加えて,Wordsyncしているシステムでは同期している機器もそれぞれ設定を変更しなければならないですし,実際に試してみるとわかります が,Wordsyncのタイミングで音が変わってしまうハードも存在します(細かいことを言えばですが)。
そういう意味では,Wordsyncを念頭にしたPCトラポ+DACという構成のシステムはCD再生に注力したものといえ,様々なビットレートのデータを頻繁に切り替えて利用するには実用性の面でかなり問題があるのも事実です。

このように,高音質音楽配信に注力する場合,Wordsyncに頼らないシステム作りが必要になってきます。ネットワークオーディオプレーヤーがインターナルクロックできちんと完結している点はハードウェア的なコンセプトとして非常に優れているといえるでしょう。

議論状況

ネットワークオーディオ分野で理論的アプローチから参考になる発言というのは数少ないのですが,LANを使ったデータ転送にしてもジッター汚染の可能性があることについて言及したものとしてはかないまるさんの発言があります。

参考

○Q&A 9-1の続き
http://kanaimaru.com/AVQA/q9002.htm